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利益改善205施策の18位は、「人気でも、ピークに10分を超える1品を外す」でした
おいしいし、人気もある。それなのに、メニューから外したほうがいい1品があります。
理由は味ではありません。料理が出てくるまでの時間です。
飲食店の利益改善策を205個すべて書き出して採点したところ、18位タイに入ったのが「提供時間の遅いメニューを無くす」でした。79点のS評価です。
私は利益改善策の一つひとつを、「年間いくら利益が増えるか」「いくらかかるか」「効果が出るまで何か月か」の3つの基準で、100点満点の採点をしました。205個の中の18位ですから、ほとんどの施策より上です。しかも、かかるお金は0円。使うのは伝票とペンと、メニュー表だけです。
申し遅れました。私は飲食店の店長を10年、経営を25年、コンサルタントを15年やってきました。今は飲食店専用のPOSレジを作る会社を経営しながら、60席の焼肉店を自分で経営しています。この記事の試算はすべて、その実在するお店(月商500万円・客単価6,000円・原価率34%)の数字で行います。
先にお断りしておきます。この記事に出てくる「遅い1品で二度と来なくなる組が月に12組」「そのお客様は年に4回来てくださる」「ピークに待たされる組が1日5組で、ドリンクが1杯ずつ止まる」という前提は、「〜としたら」という仮定です。仮定を置いたうえで、売上や利益のお金の部分を、私のお店の数字で試算していきます。
この記事では、なぜ遅い1品がお客様を減らすのか、どこからが「遅い」のか、伝票とペンだけでできる3ステップ、そしてやりがちな2つの罠までお伝えします。読み終わる頃には、次の金曜日のピークに誰が何を書けばいいかが、はっきり決まっているはずです。
採点の内訳は、この施策の正直な姿です
まず点数の中身からお見せします。
- インパクト7点:後ほどお見せする試算で、利益で年間およそ370万円。年350万円以上400万円未満のクラス
- コスト10点:現金の支出は0円。時刻を伝票に書くのは数秒、止めるのは札1枚、外すのも手書きで済む。満点
- 時間6点:年に4回来てくださる方なら次の来店は3か月後。戻ってきてくださったと分かるまで4か月を見ておく
合計は、7×5+10×3.5+6×1.5で79点。205個のうち79点より上は17件、79点は2件なので、第18位タイです。
注目してほしいのはコストの満点です。提供時間を速くしようとすると、厨房機器を入れ替える、人を増やす、といった大がかりな話になりがちです。けれどもこの施策は、機器も人も増やしません。やることは、時刻を測って、メニューの中身を仕分けるだけ。お金がかからないのに18位に入っているのは、ここに理由があります。
一方で、時間の6点は正直に受け取ってください。遅い1品を外した翌週に、売上がぐんと伸びるわけではありません。来なくなっていたお客様が戻ってきてくださるのは数か月先です。即効性はないけれど、お金をかけずに今週から始められる。そういう性格の施策です。
メニューの施策なのに、正体は「リピート対策」です
この施策がある「場所」にも注目してください。
利益改善のロジックツリーで言うと、「利益を増やす→売上を上げる→客数を増やす→リピート客を増やす→お客様の不満を無くす」の枝にあります。メニューの話なのに、原価や商品開発の枝ではなく、リピートの枝。ここに、この施策の本質があります。
遅い1品を外しても、新しいお客様は増えません。増えるのは「もう一度来てくださるお客様」です。一度来てくださったお客様が戻ってこなくなる原因を、メニューの中から取り除く。新規のお客様を集める施策ではなく、せっかく来てくださったお客様を失わないための施策なのです。
同じ枝の「3位」と「11位」との違いを、先に整理します
この「お客様の不満を無くす」の枝には、採点で上位に入った施策が3つ並んでいます。混ざりやすいので、先に線を引いておきます。
- 第3位「おいしくない商品を無くす」(92.5点)……不満の元はお皿の中身。出数の少ない商品を4つの質問で見直して、まず1品消す話
- 第11位タイ「サービスの悪い接客を無くす」(82.5点)……不満の元はスタッフの動作。やらないこと10か条を決めて、件数を数える話
- 第18位タイ「提供時間の遅いメニューを無くす」(79点・この記事)……不満の元は料理が届くまでの時間。よく出ている商品でも、ピークに10分を超えるなら仕分ける話
3位の回は、出ない商品を消す話でした。この記事は、よく出ている商品でも、時間で外す話です。対象がまったく逆だと考えてください。
11位の回との違いもはっきりしています。あちらは「お待たせしたのに一言がない」のように、スタッフの動作をそろえる話です。この記事で扱うのは、スタッフがどう動いても10分で出てこない1品があるという、メニューとオペレーションの話です。接客をいくらそろえても、20分かかる料理は20分かかります。変えるのはスタッフの動きではなく、メニューの中身です。
ちなみに3位の回では、4つの質問の1つに「提供に時間がかかりすぎていないか」を入れていました。この記事は、そこを独立させて、測り方と仕分け方まで手順にしたものです。
お客様が覚えて帰るのは、遅かった1品ではなく「待たされた」の一言
料理を待っている間、お客様が何をしているか、思い出してみてください。
会話が途切れて、厨房のほうを見る。スマホで時計を見る。そして、次のドリンクを頼むのをやめます。料理が来ないうちは、次の注文を考えられないからです。
ここで覚えておいていただきたいことがあります。お客様は、遅かった1品だけを覚えて帰るわけではありません。覚えているのは「あのお店は待たされた」という一言です。
ほかの料理が全部早くても、最後の1品が遅ければ、その日の記憶はそこで決まります。あとから「でも、お肉は早かったよね」と思い出してくださる方は、まずいません。1品の遅れが、その日のお店全体の評価になって持ち帰られるのです。
遅い1品は、そのテーブルの次の注文を止めます
もうひとつ、その場で起きていることがあります。
料理を待っている間、ドリンクのおかわりが止まります。お客様は、料理が来ないうちは次の注文を考えられません。「あとで頼もう」と思ったドリンクは、たいてい頼まれないまま終わります。遅い1品は、未来の売上と、今日の売上を同時に削っているのです。
遅い1品は、ほかのテーブルまで巻き込みます
さらに厄介なのは、遅れが1つのテーブルで止まらないことです。
手間のかかる1品が入ると、厨房の1人がその皿にかかりきりになります。その間に入った注文は、全部その後ろに並びます。1品の遅れが、厨房の中で順番に広がっていくのです。
つまり、その1品を頼んだテーブルだけでなく、同じ時間に座っていたほかのテーブルも、少しずつ待たされています。これが、遅い1品を「あとで考えよう」で済ませてはいけない理由です。
どこからが「遅い」のか——線はピークの時間に、注文から10分
では、どこからが「遅い」のか。基準がなければ仕分けられません。
線は、注文から10分です。ピークの時間に、注文から10分を超えて出てくる料理。これがこの記事で言う「遅い1品」です。
10分を超えたあたりから、お客様の「まだかな」が「遅いな」に変わっていきます。時計の上ではわずかな差でも、お客様の頭の中では、待っている状態から待たされている状態に変わっています。
10分は、厳しすぎる線ではありません
「10分なんて無理だ」と思われた方もいると思います。でも、お客様の側から見ると、10分はちょうどいい長さです。
私のような焼肉店なら、10分は、最初のお肉が焼けて、1杯目のドリンクが空くころです。その時間に次の料理が届いていれば、テーブルの流れは止まりません。
大事なのは、10分という線を「全部の料理を10分で出せ」という号令にしないことです。これは、仕分けるための線です。
年間およそ370万円が消える試算
数字にします。
私のお店は月商500万円、客単価6,000円で、お客様は月におよそ830人です。3人組で数えると、月に280組になります。
仮に、遅い1品で待たされて、二度と来なくなる組が月に12組いたとします。280組のうちの12組ですから、2〜3日に1組です。決して多い想定ではないと思います。
- 年にすると、12組×12か月=144組
- 年に4回来てくださる3人組なら、1組で3人×4回×6,000円=年7万2,000円
- 144組×7万2,000円=失う売上は年およそ1,000万円
- 原価34%と人件費30%を引いた36%が利益なので、約1,000万円×36%=年間およそ370万円
これが、この施策をインパクト7点と採点した根拠です。
この流出の怖いところは、クレームにならないことです。待たされたお客様は、その場で怒鳴りません。静かにお会計をして、次から別のお店を選ぶだけです。今日の売上は下がらないので、お店の側は何も気づきません。
その場で止まっている売上も、年およそ110万円
さきほどお話しした、ドリンクのおかわりが止まる分も計算しておきます。
仮に、ピークに待たされる組が1日5組、その組でドリンクが1杯ずつ止まるとします。
- ドリンク1杯600円なら、5組×600円×30日=月に9万円
- 年にすると、9万円×12か月=およそ110万円
来なくなる売上と、その場で止まる売上。遅い1品は、この2つを同時に削っています。
なお、この110万円は売上ベースの数字で、インパクトの点数には含めていません。点数の根拠は、さきほどの年およそ370万円のほうです。
かかるお金は0円。だからコストは満点の10点
この施策で、新しく買うものはありません。
注文の時刻を伝票に書くのは、伝票を書くついでの数秒です。ピークだけ止めるときに出すのは、品切れの札1枚。メニューから外すのも、手書きで済みます。
参考までに、伝票から時刻を拾って集計する手間は、2日分で3時間ほどです。時給2,000円に換算して1回6,000円、年4回やっても2万4,000円。これは「年30万円以内」というコスト満点の条件の、1割にも届きません。だからコストは10点としました。
ステップ1:次の金曜と土曜のピークに、伝票へ2つの時刻を書く
ここから手順です。道具は伝票とペン、それにメニュー表だけ。3ステップです。
まず、測ります。測る日は、次の金曜と土曜。測る時間は、お店が一番混む2時間だけで十分です。
- ホールのスタッフは、注文を受けたら、伝票の右上に時刻を書く
- 厨房は、その料理を出したときに、品名の横に時刻を書く
新しい用紙も、新しいアプリも要りません。
伝票の書き方と、集計の型
たとえば、19時32分に注文を受けた石焼ビビンバが、19時47分に出ていたら15分です。伝票の右上に「19:32」、品名の横に「19:47」と書いてあれば、あとから引き算ができます。
営業が終わったら、店長が伝票を集めて、品名ごとに一番遅かった時間を紙に書き出します。
書き出してみると、遅い品はたいてい2つか3つに集まります。全部の品が遅いお店は、ほとんどありません。これが分かるだけでも、大きな一歩です。どこを直せばいいか、対象が2つか3つに絞られるからです。
平均ではなく「一番遅かった時間」で見る理由
集計のときに、1つだけ守っていただきたいルールがあります。
平均ではなく、一番遅かった時間を書いてください。
同じ石焼ビビンバでも、早く出た日と15分かかった日があります。でも、15分待たされたお客様の記憶は、平均では薄まりません。お客様が覚えて帰るのは、平均ではなく、その方が実際に待った時間です。一番遅かった時間が10分を超えていれば、その品には丸が付きます。
ステップ2:10分を超えた品に丸を付けて、3つに仕分ける
丸を付けた品を、3つだけに仕分けます。
- 1つめ、仕込みで前に出せる品。前の日に下ごしらえを済ませておけば、10分を切れるもの。これは直します
- 2つめ、ピークの時間だけ止められる品。金曜と土曜の19時から21時だけ、品切れの札を出します
- 3つめ、どちらもできない品。これはメニューから外します
直す/ピークだけ止める/外す——順番を守ってください
順番は、直す、止める、外す、です。いきなり外すところから始めないでください。
焼肉店で言えば、チヂミは前の日に生地を仕込んでおけば、焼くだけになります。これは直せる品です。石焼ビビンバは、石の器を温めるのに時間がかかるので、ピークだけ止める品です。
この順番が大事なのは、外すのがいちばん損が大きい選択だからです。直せる品を外してしまえば、売れていた1品を失うだけです。まず厨房と一緒に、仕込みで前に出せないかを考えてください。
ピークだけ止めるときの、お客様への一言
「ピークだけ止める」と聞くと、お客様に申し訳ないと感じます。聞かれたときの一言を決めておけば大丈夫です。
「この時間はお時間をいただくので、お休みしています。すぐお出しできるのは、こちらです」
お客様を待たせないための休みだと伝われば、がっかりされることはぐっと減ります。札も「売り切れ」ではなく、「この時間はお時間をいただくためお休みしています」と書いておくと、意図が伝わります。そして必ず、代わりにすぐ出せる1品をすすめてください。
無くすのはメニューではなく「遅い」です
ここが、この施策でいちばん誤解されやすいところです。
無くすのはメニューではなく「遅い」です。
直して10分を切れるなら、その1品は残していい。外すのは、どうしても間に合わない品だけです。遅い品を全部メニューから落とす話ではありません。
丸が付いた品が3つあって、2つが仕込みで直せて、1つがピークだけ止められるなら、外す品は0です。それでこの施策は完了しています。目的は、ピークの時間に10分を超える料理がテーブルに出ていかない状態を作ることで、メニューの数を減らすことではありません。
ステップ3:翌週の同じ曜日、同じ時間に、もう一度測る
仕分けたら、答え合わせをします。
翌週の同じ曜日、同じ時間に、もう一度測ります。丸を付けた品が、全部10分を切っていれば合格です。
切れていない品があれば、仕分けをひとつ先へ進めます。
- 直すはずだった品が、まだ10分を超えている → 止める
- 止めたはずの品が、ピーク外でも10分を超えている → 外す
2週続けて全部の品が10分以内に収まったら、あとは月に1回測るだけで足ります。
外した品の注文がどこへ移ったかも見てください
外して終わりにしないでください。もう1つ見るところがあります。
外した品の注文が、どこへ移ったかです。
- 外した品の分、ほかのサイドやドリンクの出数が増えている → 売上は守れています
- ほかの品が増えずに、1組あたりのお会計が下がっている → 外すのが早すぎたサインです
後者の場合、その品は「止める」に戻してください。そして、仕込みで直せないか、もう一度厨房と相談します。外すという判断は、取り消していい判断です。
私が外した、特大のパフェの話
人気のある1品ほど、外すのは勇気がいります。楽しみにしているお客様の顔が、浮かぶからです。
でも、待たされたのは、その1品を楽しみにしていた方です。楽しみにしていた分だけ、待たされた記憶も強く残ります。
私も、おいしくても調理に時間がかかる商品を、メニューから消してきました。いちばん痛かったのは、特大のパフェです。
売り商品として作りました。値段も高く、粗利も大きい。お客様にも喜んでいただけました。
ところが、作るのに時間がかかりました。1品作るのに20分。ほかの作業をしながらなので、注文から提供まで、平均40分くらいかかっていました。
デザートは、そろそろ帰ろうと思ってから頼む商品です。ワクワクして頼んだのに、なかなか届かない。お客様を怒らせて、お帰しすることになりました。本当にダメなことをしました。
それで、メニューから外しました。
粗利が大きい1品でも、提供までの時間が合っていなければ、残しておく理由にはならない。私はこの1品で、それを学びました。
罠1:空いている時間に測る
ここから、やりがちな2つの罠です。
1つめは、空いている時間に測ることです。
平日の早い時間に測ると、ほとんどの品が10分以内に収まります。厨房に余裕があるからです。遅さが出るのは、満席のときです。
60席のお店が満席になると、3人組で20組から、ほぼ一斉に注文が入ります。厨房が本当に試されるのは、この時間だけです。空いている時間の数字で「うちは大丈夫」と判断してしまうと、この施策は何も見つけてくれません。
測るのは、金曜と土曜のピーク。ここだけでいいので、ここは外さないでください。
12月の前に終わらせてください
もう1つ、時期の話があります。
これから迎える12月は、1年で一番忙しい月です。宴会が重なる夜に、ふだんは気にならない1品が、いきなり厨房を止めます。
だから測るのは、忘年会が始まる前の、いまの週末です。11月のうちに仕分けを終えておけば、12月を落ち着いて迎えられます。
12月に入ってからでは、メニューを変える時間はありません。10月と11月の週末が勝負です。
罠2:スタッフを急かして解決しようとする
2つめの罠は、スタッフを急かして解決しようとすることです。
「もっと早く」と声をかけるのは簡単です。でも、急いで作った料理は、焼きが甘くなったり、盛り付けが崩れたりします。遅い1品が、今度は「おいしくない1品」に変わってしまいます。
それに、急かされ続けたスタッフは疲れていきます。遅いのは、スタッフの手が遅いからではありません。その1品が、ピークの厨房に合っていないだけです。
変えるのはスタッフの手の速さではなく、メニューの中身です。
時刻を書くのは、スタッフを守るためでもあります
ここで、伝票の時刻が役に立ちます。
「遅い」と言うと、スタッフは自分が責められたと感じます。でも「この品は、ピークに15分かかっている」と時刻で話せば、それは品の話になります。
厨房と一緒に、直すか、止めるか、外すかを決める。話し合いの中心が人から品に移るだけで、会話はまったく変わります。時刻を書くのは、スタッフを守るためでもあるのです。
業態別の読み替え
お店の業態によって、線の引き方と見る場所を補正してください。
居酒屋
宴会コースから見直してください。コースは1品が遅れると、その後ろの料理が全部止まります。10分を超える品は、コースに入れない。これだけで、幹事さんの「料理が遅い」が1つ減ります。
ラーメン店
1杯が出るまでの時間が、そのまま回転です。10分の線は長すぎるので、もっと手前に引いてください。手間のかかる限定の1杯は、ピークの時間だけ止めるのが向いています。
カフェ
手間のかかるドリンクが遅さの元になりがちです。ランチのピークだけ、その1杯を止めてください。
焼肉店
私と同じ焼肉店なら、お肉を焼くのはお客様なので、お肉は早く出せます。遅くなるのは、石焼ビビンバやチヂミのように、厨房で火を通すサイドメニューです。お肉が早いお店ほど、サイドの遅さが目立ちます。測るのは、まずサイドからです。
ロードマップ:時間6点の道のり
採点で時間6点=「数字に表れるまで4か月」とした道のりを、時系列にしておきます。
- 今週:営業前に、注文の時刻と提供の時刻を誰が書くかを決める。金曜と土曜のピーク2時間だけ測る
- 営業後:店長が伝票を集めて、品名ごとの「一番遅かった時間」を書き出す。10分超に丸を付ける
- 翌週:丸を付けた品を、直す/ピークだけ止める/外すに仕分ける。同じ曜日・同じ時間に測り直す
- 3週目:まだ10分を超えている品は、仕分けをひとつ先へ進める。2週続けて全品10分以内になれば完了
- 11月中:外した品の注文がどこへ移ったかを確認する。1組あたりのお会計が下がっていたら「止める」に戻す
- 12月:仕分けの済んだメニューで、忘年会シーズンを迎える
- 4か月後:待たされて来なくなっていた方が戻ってきてくださったかが、数字に表れ始める
途中で「10分を切ったのに、売上が変わらない」と感じる期間があります。それで合っています。この施策の効果は「増える」ではなく「消えるはずだったお客様が消えなくなる」なので、実感は遅れてやってきます。だからこそ、毎週の「一番遅かった時間」を道しるべにして進んでください。
時刻の集計は、伝票から拾うと2日分で3時間
ここまで読んで、「うちもやってみよう」と思ってくださった方に、先にお伝えしておきたいことがあります。
2日分のピークを測って仕分けるだけなら、伝票とペンで足ります。まずはここから始めてください。
ただ、2日分の伝票から品名ごとに時刻を拾って並べると、3時間かかります。注文から料理が出るまでの時間が自動で記録される環境なら、1分です。
はじめの1回は、3時間かけてでも手で測る価値があります。伝票をめくっていると、どの時間にどの注文が重なっていたかまで見えるからです。続けるかどうかを決めるのは、その次からで間に合います。
よくある質問
Q. 10分という線は、うちのお店にも当てはまりますか。
A. 業態によって変わります。ラーメン店なら10分は長すぎるので、もっと手前に引いてください。大事なのは、お店で1本の線を決めて、全員が同じ線で判断することです。線が人によって違うと、仕分けができません。
Q. 全部の料理を10分で出さないといけないのですか。
A. いいえ。10分は、仕分けるための線です。ピークの時間に10分を超えている品を見つけるためだけに使います。10分を切っている品は、そのままでいいのです。
Q. 遅い品が多すぎて、仕分けきれません。
A. 書き出してみると、遅い品はたいてい2つか3つに集まります。全部の品が遅いお店は、ほとんどありません。もし多いと感じるなら、平均ではなく「一番遅かった時間」で見られているか、測った時間が本当にピークだったかを確認してください。
Q. 平均で見てはいけませんか。
A. おすすめしません。早く出た日の数字と混ぜて平均を取ると、15分待たされたお客様の時間が薄まってしまいます。お客様が覚えて帰るのは、その方が実際に待った時間です。
Q. 人気のある1品を外すと、売上が下がりませんか。
A. だから、いきなり外さない順番にしています。まず仕込みで直せないかを考え、次にピークだけ止める。外すのは、どちらもできない品だけです。外したあとは、ほかのサイドやドリンクの出数が増えているかを見てください。増えずに1組あたりのお会計が下がっていたら、外すのが早すぎたサインなので「止める」に戻します。
Q. ピークだけ止めると、お客様に怒られませんか。
A. 「この時間はお時間をいただくので、お休みしています。すぐお出しできるのは、こちらです」とお伝えください。待たせないための休みだと伝われば、がっかりされることはぐっと減ります。札にも「売り切れ」ではなく、お時間をいただくためお休みしていると書いてください。
Q. スタッフに「もっと早く」と言うのでは、だめなのですか。
A. 急いで作った料理は、焼きが甘くなったり盛り付けが崩れたりして、今度は「おいしくない1品」になります。遅いのは、スタッフの手が遅いからではなく、その1品がピークの厨房に合っていないだけです。変えるのはメニューの中身です。
Q. 時刻を書くのを、スタッフが嫌がりそうです。
A. 「遅い」と言われるとスタッフは自分が責められたと感じますが、「この品はピークに15分かかっている」と時刻で話せば、それは品の話になります。時刻を書くのは、スタッフを守るためでもあると伝えてください。書く手間も、伝票を書くついでの数秒です。
Q. 何から始めればいいですか。
A. 次の金曜日のピークに、伝票の右上へ、注文を受けた時刻を書いてください。外すかどうかを決めるのは、その翌週で間に合います。
まとめ:注文してから届くまでの時間も、料理の一部です
要点を3つにまとめます。
- お客様が覚えて帰るのは、遅かった1品ではなく「あのお店は待たされた」という一言。ほかの料理が全部早くても、最後の1品が遅ければその日の記憶はそこで決まる
- 線は、ピークの時間に、注文から10分。月商500万円のお店で、待たされて来なくなる組が月に12組だとしたら、年間およそ370万円の利益という試算になる
- 無くすのはメニューではなく「遅い」。順番は、直す、ピークだけ止める、外す。直して10分を切れた品は残していい
明日の1歩はこれだけです。次の金曜日のピークに、伝票の右上へ、注文を受けた時刻を書いてください。時刻を書くだけで、どの1品が厨房を止めていたのかが見えてきます。
遅い1品が減った分だけ、厨房には余裕が生まれます。その余裕は、ほかの料理の出来栄えに戻ってきます。料理の味は、お皿の上だけで決まるわけではありません。注文してから届くまでの時間も、料理の一部です。10分で届く1品は、30分待った特別な1品に勝ちます。
最後に、忘年会シーズンの思い出をひとつ。1フロア30名ほどの宴会場が、5フロアあるお店にいました。12月の2週目と3週目の金曜・土曜は、どのフロアも宴会でいっぱいです。階ごとに開始を1時間ずらして、2時間おきに4回転させていました。お客様が出入りしている間に、従業員が集まって次の準備を整える。そのチームプレーが、毎年のイベントのようで楽しかったんです。
この内容は、YouTube「飲食店経営ワンゼミ」教科書シリーズ#20でも解説しています。伝票への時刻の書き方の見本と、10分を超えた品の仕分け表をそのまま使える「提供時間チェックシート」を公式LINEで無料配布していますので、今週の営業前ミーティングにそのままお使いください。
私も自分のお店で、今週末また伝票に時刻を書きます。一緒にやりましょう。
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