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無人コンビニの先駆け・Amazon goとは?仕組みやメリット、課題などを徹底解説

レジにスタッフがいないコンビニが現実になりつつあります。AIやテクノロジーが無人コンビニを可能にし、2018年にアメリカでAmazon goが誕生しました。店舗に入り、商品を選び、店舗を出るだけでショッピングができる画期的なコンビニです。

レジで接客してもらうのが一般的であるため、なぜ無人コンビニが可能になるか疑問に感じるでしょう。そこで本記事では、Amazon goについて、利用方法や仕組み、メリットなどを詳しく解説していきます。

Amazon goとは

Amazon goとは、通販サイトで馴染みのあるAmazon.comが運営するコンビニです。2016年にAmazon本社内でオープンし、2018年には1号店をアメリカ・シアトルにオープンしました。従来のコンビニと異なる点は、レジに人がいないことです。スマートフォンを利用して、自動で決済することで無人でのショッピングを可能にしています。なぜ無人での決済ができるのか、顧客はどのように利用するのかについて、詳しく見ていきましょう。

厳密には「レジレスコンビニ」

Amazon goは、レジに人がいないことで無人コンビニの先駆けとされています。ただ完全に無人ではありません。Amazon goでは、サンドイッチやサラダなど生鮮食品を多く扱っていて、店内に調理スペースがあります。そのため、調理するスタッフと陳列スタッフは働いています。完全に無人ではなく、レジを必要としないレジレスコンビニという言い方もできるでしょう。

Amazon goの利用方法

Amazon goでショッピングするためには、まずAmazon goアプリをスマートフォンにインストールが必要です。Amazon goの入り口にゲートがあり、アプリで表示したバーコードをかざして入店します。商品を手に取ると、アプリに会計が表示されていき、ゲートを通って店舗を出ると自動で決済されます。レジに並んだり、財布を出したりすることなく、ショッピングができます。次になぜ自動決済が可能になるか仕組みを見ていきましょう。

Amazon goの仕組み

Amazon goが無人コンビニを実現する仕組みには、さまざまな技術や機器が関わっています。Amazon goのシステムはJust Walk Outシステムと言い、顧客の動きを正確に捉えるトラッキングを行っています。

Amazon goの店舗内に設置されたカメラやセンサーが顧客の動きを正確に捉えます。商品を手に取る、棚に戻すなどを商品にかかる圧力や商品の移動による重力の変化、袋の音などあらゆる視点でのトラッキングを可能にしました。同時に商品を持ったり、見えないように隠したりしても正しく認識されるようです。

Amazon goの現状

Amazon goは、2019年3月時点で店舗数が増加しています。シアトルに4店舗、シカゴに4店舗、サンフランシスコに3店舗がオープンされています。2021年には最大3,000店舗に増やす計画があるようで、今後にさらに店舗数が増えると予想できます。

Amazon goは、ただ店舗数を増やしているのではありません。店舗によってカメラやセンサーの数、種類が違うようで、既存店舗での課題解決に取り組んでいると捉えることができます。Amazon goと同じスタイルの無人コンビニの登場や飲食業界の対策がある中で、改善を続けているようです。

Amazon goのメリット

Amazon goには、これまでのコンビニにはないメリットがあります。顧客の利便性だけでなく、コンビニ運営にも良い効果があります。Amazon goで得られるメリットをご紹介していきます。

レジを待たずに会計できる

従来のコンビニは、商品をレジに持っていって、会計する必要があります。セルフレジでもバーコードの読み取りといった操作が必要です。会計にかかる時間以外にも、レジの順番を待つ時間もあります。

Amazon goでは、商品を選んで店舗を出るだけで会計が完了するため、並ばずにショッピングできます。セルフレジのような操作も、入店時のバーコードスキャンのみです。列が長くてイライラすることがなく、時間がない時でも素早く買い物することができます。

人件費削減・人手不足の解消

店舗側のメリットとして、レジスタッフを配置する必要がなくなります。スタッフの人件費を減らし、運営コストを削減することができるでしょう。Amazon goのように生鮮食品を扱わない場合は、さらに人件費を抑えられるはずです。

人件費だけでなく、人手不足の解消にもつながります。必要な人員が少なくなり、最小限の人数で運営することができます。日本における人手不足の現状は、2019年3月に経済産業省が発表した調査によると、コンビニの6割が人手不足のようです。人員に合わせた営業時間にしたいなど状況は深刻と言えるでしょう。

その点Amazon goの仕組みは、コンビニ業界にとって人手不足を解消する方法のひとつとなります。後で解説しますが、Amazon goに注目し、課題解決のために無人コンビニの実験が進められています。

Amazon goの課題

Amazon goは画期的なコンビニですが、いくつかの課題も考えられます。テクノロジーを最大限に駆使しているからこそ、システムのトラブルには弱いかもしれません。3つの課題をピックアップし解説していきます。

システムがダウンしたときにどうなるのか

Amazon goは、会計を自動で行うために、無数のカメラやセンサーなどを使用しています。もしシステムがダウンしてしまい、カメラやセンサーが稼働しない、誤作動するといった場合には、どうなるのか疑問に感じるでしょう。

買っていない商品が会計に含まれていたり、会計が反映されないと、気持ちよく買い物できないだけでなく、不正が行われるかもしれません。仕組みの大半をテクノロジーで任せることによって、万が一のトラブルには不安が残るでしょう。

万引きの危険性

高度なトラッキング技術によって、顧客のあらゆる動きを捉えます。商品を隠してみて、どのような反応をするのかを試している人もいるようです。ただ誤認識はほとんどなく、不正はできないように思えます。

そのような中、アメリカのYouTuberが万引きに成功したという動画を投稿しました。システムの穴をついて万引きできるということが示されています。どうやら誤認識で登録された商品を返品操作し、そのまま持ちだしたようです。画期的なシステムがあるだけでなく、モラルのある顧客が存在することが、万引きなどの不正を起こさないために必要でしょう。

完全キャッシュレスではなくなる?

Amazon goはキャッシュレス決済を利用することで、自動決済を可能にしています。そのため、レジスタッフやレジスターなどの機器なしで、これまでにない無人コンビニを実現しました。

現在は完全キャッシュレスですが、今後現金に対応する必要が出てきているようです。2019年4月にキャッシュレス店舗を禁止する法律がフィラデルフィアで生まれました。現金支払いも尊重するための法律で、今後他の都市にも適用される可能性があります。

Amazon goにレジスタッフやセルフレジといった現金支払いサービスが必要になるかもしれません。顧客の支払い方法にもよりますが、Amazon goのメリットが軽減してしまうでしょう。

Amazon goは日本に進出するのか

Amazon goの日本進出は未定のようです。まずアメリカ国内で店舗を増やし、2021年までに最大3,000店舗を目指していると言われています。システムの改善など確実なものとなってから、日本に進出してくるかもしれません。

Amazon goの日本進出は、顧客にとっては利便性が高まり、嬉しい出来事でしょう。コンビニ店舗にとっては、強力な競合店になるはずです。次に紹介する無人コンビニの実証実験など、日本のコンビニに進化が求められるでしょう。

日本での無人コンビニ実現に向けた取り組み

Amazon goのようなレジスタッフを配置しないコンビニは、日本でも実験が行われています。大手コンビニのファミリーマートやセブンイレブン、ローソンが実験に取り組んでいます。日本でどのような取り組みがされているか見ていきましょう。

ファミマミライ

ファミリーマートでは、ファミマミライという名前でAIを活用したコンビニの実用化を目指しています。LINE株式会社のClovaというAI技術やLINE Payを活用した無人コンビニ化は検討されています。

公開されているコンセプトムービーでは、Clovaによってファミリーマートに近づくと音声で通知されます。LINE Payを店舗入り口でかざして入店した後、商品選んで店舗を出ると会計されるという仕組みのようです。Amazon goに近い仕組みでレジを通らずにショッピングしています。

また、ムービーを見ると、有人レジも見受けられます。スタッフが顧客に声をかける様子もあり、完全に無人化されたコンビニではないようです。顧客とのコミュニケーションを維持しつつ、利便性の高いコンビニを目指していると捉えることができるでしょう。

セブンイレブンの無人コンビニ実験

セブンイレブンでは、技術協力しているNECの社員向けに、実験店舗をオフィスが入っている三田国際ビル20階にオープンしました。社員証と顔認証システムを連携させ、入店できるという仕組みで、会計はセルフレジで行います。

同じ三田国際ビル地下1階にも、マイクロマーケットと呼ばれる小規模店舗を展開しています。セルフレジですが、スタッフは必ず1名常駐するため、完全無人化ではありません。セブンイレブンではあくまで省人化に取り組み、無人化は考えていないようです。顧客とのコミュニケーションを重視しつつ、省人化実現に向けて実験を進めています。

ローソンの深夜無人営業実験

ローソンでは、深夜時間帯の無人化実験を進めています。コンビニ業界の人手不足を受けて、深夜時間帯の人員確保の解決策として無人コンビニ実験が行われています。

仕組みとしては、まず専用スマートフォンアプリを利用し、店舗の扉を開錠して入店します。商品購入にもアプリを活用しますが、セルフレジで現金支払いできる設備も検討しているようです。徐々に完全無人化に移行し、顔認証システムも導入するという計画がされています。人手不足による営業時間の短縮などを解決する手段として注目が集まっています。

中国で無人コンビニが拡大中

Amazon goの登場によって、日本だけでなく中国でもコンビニの無人化に取り組まれています。中国の無人コンビニの先駆けはBingo Boxという無人コンビニで、QRコードやRFIDタグによって、無人化を実現しました。他にも、同じくRFIDタグを活用したWellGOや画像認識を活用した簡24など、無人コンビニがブームになっています。日本に進出する計画もあるようで、Amazon goと合わせて、動きに注目しましょう。

まとめ

Amazon goは、無人コンビニの先駆けとしてアメリカで誕生した店舗です。最新技術を活用した顧客のトラッキングによって、レジを必要としない自動決済を可能にしました。アメリカ国内で拡大を続けているため、日本進出の可能性もあるでしょう。

Amazon goだけでなく、日本でも無人コンビニの実験が進められています。ファミリーマートやセブンイレブン、ローソンで取り組まれ、日本発の無人コンビニが誕生するかもしれません。Amazon goや日本の無人コンビニの動向を注意深く見ていきましょう。