POSレジを選ぶとき、多くの方が最初に見るのは「機能一覧」と「月額いくら」です。

でも、実際に入れ替えたお店の話を聞くと、後悔の理由はほぼ機能一覧に載っていないところにあります。

  • 「飲み放題の計算が、うちのやり方に合わなかった」
  • 「あとでモバイルオーダーを足そうとしたら、レジごと買い替えと言われた」
  • 「金曜の22時に止まって、月曜まで誰にもつながらなかった」
  • 「勤怠は別のシステムなので、結局まだ手で計算している」

機能一覧はどのメーカーも似てきます。 差が出るのは、その機能が「自分の店のやり方」で動くのか、そして入れたあとの5年間です。

この記事では、比べるべき7つの軸を示します。あわせて、各軸で商談のときにそのまま口に出して聞ける質問文を付けました。これを持って3社に同じことを聞けば、カタログを何時間眺めるより早く差がわかります。

この記事の立場:特定の製品を推したり、他社製品の優劣を判定するものではありません。判断の軸を整理するための記事です。最終的な比較は、必ず各社の公式資料と、自店の条件を入れた見積で行ってください。

目次

軸1:自分の業態の「特殊な計算」が、標準で通るか

ここが一番大きく、一番見落とされます。

飲食店の会計には、業態ごとの特殊な計算があります。たとえば——

  • 食べ飲み放題:放題を頼んだテーブルだけ、指定商品が0円で計算される必要がある。しかも複数コースがあると、テーブル別に別のコースで動く必要がある
  • 深夜料:時間帯で自動的に加算される必要がある
  • 先に帰るお客様:1人分だけ先に会計して、残った人の注文を続けられる必要がある
  • 店内/持ち帰りの税率:10%で登録した商品を、その場で8%に切り替えられる必要がある
  • 麺の硬さ・味付け・飲み方の指示:商品だけでなく「どう作るか」をキッチンに伝えられる必要がある
  • 複数フロア:キッチンの注文は厨房へ、ドリンクの注文はそのフロアのプリンターへ、と出力先を分けられる必要がある

これらは「できます」と言われがちですが、カスタマイズが必要か、標準で動くのかで話が変わります。カスタマイズは費用と納期がかかり、将来のバージョンアップでつまずく原因にもなります。

商談で聞く質問

「うちは○○(食べ飲み放題/深夜料/複数フロアなど)をやっています。これは標準機能ですか、それとも追加開発ですか? 標準なら、いま実機で見せてもらえますか?」

「見せてもらえますか」まで言うのが大事です。画面を見て初めてわかることが、必ずあります。

軸2:あとから「注文の取り方」を変えられるか

レジは5年、7年と使います。その間に、お店のやり方は必ず変わります。

  • 人手が足りなくなって、ハンディを足したい
  • 常連が増えて、テーブルオーダーにしたい
  • 追加注文を増やしたくて、モバイルオーダーを試したい
  • レジ待ちが長くて、セルフレジを置きたい
  • 券売機に変えたい
  • 出す順番が混乱するので、キッチンディスプレイを入れたい

このとき問題になるのが、「レジ本体を替えずに、周辺だけ足せるか」です。ここを確認せずに入れると、3年後に「本体から買い替え」になります。

商談で聞く質問

「いまはレジとハンディだけで始めたいです。2年後にモバイルオーダーとセルフレジを足したくなったとき、本体はそのままで足せますか? そのときの追加費用の目安も教えてください」

もうひとつ、地味に重要なのが「1台から始められるか」です。たとえばテーブルオーダーを「全席分そろえないと使えない」のか、「まず1台試せる」のかで、最初の投資額がまるで変わります。

商談で聞く質問

「テーブルオーダーは、テーブル数と同じ台数ないと使えませんか? 1台だけ試すことはできますか?」

軸3:レジの外側——勤怠・シフト・給与までつながるか

POSレジ選びで一番リターンが大きいのは、実はここです。

多くのお店で、月末にこういう作業が残っています。

  • 手書きのタイムカードを集計する
  • 分単位で端数を丸める
  • ヘルプで他店に入った人の時間を、店をまたいで足す
  • 深夜手当を別に計算する
  • それをExcelに打ち込んで給与に渡す

これは毎月必ず発生する作業です。売上を上げるのと違って、確実に減らせるコストです。

そして注意点があります。レジと勤怠が別のシステムだと、結局どこかで人が転記します。 転記がある限り、時間も、間違いも残ります。

商談で聞く質問

「打刻から給与計算まで、このシステムの中で完結しますか? それとも別のサービスと連携する形ですか? 連携の場合、CSVの書き出し・取り込みは手作業ですか?」

「ヘルプで他店に入ったスタッフの時間は、どう処理されますか? ヘルプ時だけ時給を+100円にする、といった設定はできますか?」

打刻の方法も見てください。カードやIDだと代理打刻が起きます。顔認証なら本人しか打てません。「不正防止」は、疑うためではなく、店長が確認作業をしなくて済むための機能です。

軸4:店が増えたときに、本部側が楽になるか

いま1店舗でも、2店舗目の予定があるなら、ここは先に見てください。 店舗が増えたときに重くなるのは、現場ではなく本部の作業です。

  • 全店の売上・人件費・利益を、毎日集めて足す
  • メニューと価格を変えるたびに、全店で同じ入力をやり直す
  • 店ごとに勤怠を集めて、給与に回す

商談で聞く質問

「メニューと価格を、本部から全店へ一括で配信できますか? 店ごとに例外価格を持たせることはできますか?」

「全店の売上・人件費を1つの画面で見られますか? スマホからでも見られますか?」

「店長には自店だけ、本部は全店、という権限の分け方はできますか?」

軸5:出てくる数字が、意思決定に使える形か

「売上が見られます」は、どのシステムでも言います。問題は粒度です。

意思決定に使うには、最低これが必要です。

  • 商品別の出数と売上(=やめる商品・残す商品を決められる)
  • 時間帯別の売上(=営業時間とシフトを決められる)
  • 客数・客単価の推移(=値上げの判断ができる)
  • 人件費率・原価率(=いま利益が出ているかがわかる)

とくに時間帯別は効きます。「ランチが実は赤字だった」「15時〜17時に人が要らなかった」は、時間帯別の数字を見て初めてわかります。営業時間そのものを組み替える判断につながるので、ここは妥協しないでください。

商談で聞く質問

「商品別・時間帯別の数字は、標準のレポートで出ますか? 追加オプションですか? 実際のレポート画面を見せてください」

「原価と人件費を入れると、利益まで出ますか? それは別システムですか?」

軸6:止まったときに、誰が、いつ、どうやって助けてくれるか

ここを軽く見ると、いつか痛い目に遭います。

レジは、止まったら営業が止まります。しかも飲食店で一番混むのは、金曜・土曜の夜と連休です。つまり、一般的なサポート窓口が閉まっている時間です。

確認するのは「サポートがあるか」ではなく、次の4つです。

  1. 受付時間:平日9〜18時か、24時間365日か
  2. つながり方:電話で人が出るか、メールやチャットだけか
  3. 来てくれるか:現地に来るのか、電話の案内だけか。来るなら何時間で、費用はいくらか
  4. 止まっている間、営業できるか:ネットが落ちたときに、レジは動くのか。伝票は出せるのか

4番はとくに重要です。「クラウド型」の製品では、ネットが切れると何もできなくなる設計のものがあります。オフラインで会計を続けられるかは、必ず聞いてください。

商談で聞く質問

「土曜の22時に動かなくなったら、どこに電話して、誰が出ますか?」

「インターネットが切れている間、会計は続けられますか? 復旧したら自動で同期されますか?」

「故障で交換になったとき、代替機はいつ届きますか? 費用はかかりますか?」

軸7:5年で見た「お金の出方」

最後がお金です。月額だけを比べるのは、もっとも危ない比べ方です。見るべきは、5年間の総額と、お金が出ていくタイミングです。

見積で必ず分解してもらう項目

項目 確認するポイント
初期費用 本体・周辺機器・設置工事・初期設定・メニュー登録は誰がやるか(自分でやると数日かかります)
月額費用 台数が増えると上がるのか、固定か
決済手数料 キャッシュレスの料率。売上が大きいほど、ここが一番効きます
保守・サポート費 月額に入っているか、別か。訪問は有償か
更新費用 端末の寿命は何年か。5年目に何が必要になるか
解約条件 最低利用期間、途中解約の費用、データの持ち出し

商談で聞く質問

「5年使ったときの総額を、初期・月額・決済手数料・保守に分けて出してください」

「やめるときの条件を教えてください。売上や顧客のデータは持ち出せますか?」

そしてここで、補助金の話が絡みます。 飲食店のPOSレジ導入は、補助金・助成金の対象になることが多く、使えれば初期費用の負担は大きく変わります。大事なのは、交付決定の前に発注すると対象外になるという点です。 「レジを決めてから補助金を調べる」と間に合わないことがあるので、見積と同時に補助金も調べてください。

印刷して使えるチェックリスト

3社に同じ表を埋めてもらうのが、一番早い比較方法です。

# 確認すること A社 B社 C社
1 自店の特殊な計算(放題・深夜料・税率・複数フロア等)が標準機能か
2 実機のデモを自店のメニューで見せてもらえたか
3 本体を替えずに、あとからオーダー機器を足せるか
4 テーブルオーダーは1台から使えるか
5 打刻から給与計算まで完結するか(転記がないか)
6 ヘルプ勤務・別時給に対応するか
7 メニュー・価格の本部一括配信ができるか
8 全店の売上・人件費を1画面で見られるか
9 商品別・時間帯別のレポートが標準で出るか
10 原価・人件費を入れて利益まで出るか
11 サポートの受付時間(24時間365日か)
12 夜間・休日に電話で人が出るか
13 オフラインでも会計できるか
14 代替機の到着までの時間と費用
15 5年総額(初期+月額+決済手数料+保守)
16 解約条件とデータの持ち出し
17 補助金・助成金の申請サポートがあるか(費用・成功報酬)

埋まらない欄がある会社は、その欄が弱いのではなく、単に答えを持っていないことがあります。 遠慮せずもう一度聞いてください。それに答えられるかどうか自体が、導入後のサポートの予告になります。

まとめ

  1. 機能一覧では差が出ません。 差が出るのは「自店の特殊な計算が標準で通るか」「あとから足せるか」「止まったとき誰が来るか」「5年の総額」です。
  2. 一番リターンが大きいのは、レジの外側です。打刻から給与までつながると、毎月必ず発生している作業が消えます。
  3. 同じ17項目を3社に聞いてください。 カタログを読み比べるより、これが速くて正確です。

そして、自店の条件を入れた見積を取る前に判断しないこと。 席数・業態・スタッフ数が違えば、同じ製品でも金額も構成も変わります。

この記事の情報について

  • 2026年9月時点の内容です。
  • この記事は判断の軸を整理するためのもので、特定製品の優劣を示すものではありません。各社の仕様・料金は変更されます。必ず各社の公式資料と、自店の条件を入れた見積で確認してください。
  • 補助金・助成金の要件と締切は制度ごとに異なり、年度で変わります。公式の公募要領と専門家にご確認ください。