店舗の管理を有効かつ効率的にするシステムとして、「POSシステム」があります。多くの店舗で導入されているPOSレジを使用したデータ分析ですが、具体的にどのようなもので、どう活用したらいいのかよくわからない、という方も多いのではないでしょうか。
POSデータを有効に活用することができれば、マーケティング戦略を立てる上でとても心強い武器となるでしょう。そこで今回は、POSデータの基本から、データ分析の手法、さらに活用方法まで、徹底的に解説します。
目次
「POSデータ」とは
POSとは”PointOfSales”の略で、直訳すると「(商品が)売れる瞬間」という意味です。実際には、POSレジで商品の販売データを管理する仕組みのことで、この販売情報のことをPOSデータと呼びます。
POSデータは顧客の購買行動そのものであり、これらの情報を使うことで、小売業者や飲食店において、効果的なデータ分析・マーケティングを行い、ビジネスチャンスを広げることが可能です。
実際のデータ分析は専門の企業に匿名加工情報を提供することで外注することも可能です。
まずは、POSデータを利用したデータ分析の手法と、実際にPOSデータ分析を活用した施策の例を紹介します。
店舗販売に役立つ?POSデータを活用するメリット
POSデータは実際の売上や顧客数のデータであるため、店舗のリアルな状況が反映されます。このデータを見て、来店人数を予測して仕入れを調整したり、スタッフの数を検討したりすることができます。
また、得られたデータを更に細かく分析することで、次のようなことがわかります。
- その商品がどれくらい売れているのか
- その商品はいつ売れているのか
- 一緒に購入されることが多い商品の組み合わせ
- どの顧客が何をいつ購入しているのか
これらのデータを経営者や営業担当者が個人で収集・分析しようとすると、とても煩雑な管理が必要です。しかし、POSデータを利用することで、通常のレジ業務と同時にデータの収集を行うことができます。
また、POSレジ導入とPOSデータの分析をセットで提供しているサービスを利用することで、データ分析も同時に完了することができます。
これらのデータは、顧客の購買行動をそのままデータ化した、「生きたデータ」です。リアルタイムな顧客行動をデータ化して把握することで、売上向上や業務効率化等、より効果的な施策につなげることができるでしょう。
【代表的】POSデータ分析の4つの手法を徹底解説
では実際に、POSデータはどのように分析されているのでしょうか。
ここからは、POSデータ分析の基本と言える4つの代表的な手法をご紹介します。
ABC分析
ABC分析は、「その商品がどれくらい売れているのか」を見る分析方法です。
例えば下の表は、ある飲食店でPOSデータを集計して得られた当月注文数を商品別で表にしたものです。
この時、売上の上位70%に入っているメニューをA群、70~90%をB群、90%以下のものをC群という具合に3つの群に分けます。
この場合は見ての通り、A群が人気商品、B群はそれなりに売れる商品、C群はほとんど売れない商品となります。
分析結果を見て、A群の商品をキャンペーンで更に訴求したり、メニューの目立つページに載せたりなどさまざまな販売戦略を検討することで、さらなる売上向上・利益拡大を狙うことができます。
一方で、C群に関しては販売上の課題を検討したり、あるいは仕入れや在庫を減らたり、思い切って取り扱いを中止したりすることで、廃棄ロスによる損失を減らす施策が考えられます。
今回の例ではメニュー全体で比較していますが、「ランチメニュー」だけに注目してみたり、「サイドメニュー」だけで比較するなど、個々の商品ごとでなく、カテゴリーやメーカー、価格帯毎に比較することもできます。
また、店別に分析・処理を行い、市場データと比較することで、特定店舗の特徴を捉えることも可能です。さまざまな視点で切り分けることで、より具体的な施策の検討が可能となるでしょう。
トレンド分析
トレンド分析は、「その商品はいつ売れているのか」を見る分析方法です。
特定の商品に対して最低でも1年の売上推移を見て、月別・曜日別・時間帯別等の切り口で売上を比較します。商品が売れるタイミングの傾向を把握した上で、どの時期に販売や発注準備を行うべきかを見極めることが、トレンド分析の目的です。
例えば、「スポーツドリンク」であれば暑い日に熱中症対策として購入する方も多いため、必然的に7月から8月にかけての真夏日が続く季節は、スポーツドリンクの売り上げは集中するでしょう。
そのため6月頃から発注を少しずつ増やして、在庫に余裕を持っておくことが大切です。
このようにトレンド分析は、分析結果を踏まえて、よりニーズに合った季節のキャンペーンや広告の構成等を提供することができます。
バスケット分析
バスケット分析では、「一緒に購入されることが多い商品の組み合わせ」を見ることができる分析方法です。
アメリカのあるスーパーでバスケット分析を行ったところ、「子ども用紙おむつとビールが一緒に購入されることが多い」という結果が出たという話があります。
この結果からは、父親が仕事帰りに紙おむつを買ってくるように頼まれたためスーパーに来店し、自分のためについでにビールを購入する、というストーリーが見えてきます。
この例は特に意外な組み合わせの例として有名ですが、そうでなくても、一緒に購入される商品の組み合わせにはある程度傾向が出てきます。一緒に購入するニーズが見えてきたら、最初からセットにした商品を提案する、メニュー上で近くの位置に掲載する、といった取り組みを行うことで、売上向上が見込まれます。
通販サイトでよく表示される「この商品を購入した人は、この商品も一緒に購入しています」といった表示や、飲食店での「ご一緒に〇〇はいかがですか」という声掛けも、バスケット分析により生まれた施策のひとつと言えるでしょう。
RFM分析
POSの中でも、ID-POSと呼ばれる機能があります。これは、顧客毎にIDを振り分け、顧客情報とPOS情報を紐づけてデータを収集するシステムのことで、顧客ごとに細かな購買行動を分析することができます。
このID-POSの機能を使って、顧客ごとの傾向を分析する手法に、RFM分析があります。RFM分析では、顧客ごとの「R(Recency)=最終購買日、F(Frequency)=購買頻度、M(Monetary)=累積購買額」を分析します。
例えば、下の表のようにRFMそれぞれにランク1~3の設定を作ります。
ランク:1 | ||
---|---|---|
R(Recency) ■最新購入日 |
F(Frequency) ■購入頻度 |
M(Monetary) ■合計購入金額 |
1週間以内 | 20回以上 | 5万円以上 |
ランク:2 | ||
R(Recency) ■最新購入日 |
F(Frequency) ■購入頻度 |
M(Monetary) ■合計購入金額 |
半年以内 | 5回以上19回未満 | 1万円以上5万円未満 |
ランク:3 | ||
R(Recency) ■最新購入日 |
F(Frequency) ■購入頻度 |
M(Monetary) ■合計購入金額 |
半年以上前 | 5回未満 | 1万円未満 |
RFMすべてがランク1の顧客は常連のお客様と言えます。この層に対して特別なキャンペーンを展開することで、更にRFMを上げることができるでしょう。
さらに常連客の商品購買情報だけを取り出し、更にABC分析やトレンド分析、バスケット分析を行うことで、その店舗が本当に求められている施策を見出すことも可能です。
また、Rがランク2で、FあるいはMがランク1の顧客の来店頻度を上げる、Rがランク1でF・Mがランク2の顧客の売上単価を上げるという施策を検討することも有効です。
顧客の個人情報や購入履歴情報との紐づけを行えば、ランクや購買行動により異なるダイレクトメールを作成したりといった施策もできます。このように、ID-POSの機能を利用しRFM分析を行うことで、更に細かな分析と施策の検討が可能となるでしょう。
分析したデータを販売に活かした活用事例
ここまでで紹介した手法のように、データを分析してこれまで見出されてこなかった法則性や傾向を見出すことをデータマイニングと言います。
2002年には、アメリカのスーパーマーケットのデータをマイニングした結果、「咳止め薬を購入した人はジュースも購入することが多い」「化粧品とグリーティングカードを一緒に購入する人が多い」「キャンディーとグリーティングカードが一緒に購入される傾向にある」といった結果が得られたという記録もあります。
また、既存商品のABC分析を行い、B群やC群の商品について改良を加えた結果、売上が伸びたという事例もあります。POSデータ分析により見えてきた結果が、自身の店舗にとってどういう意味を持つのか、どのような改善方法が可能なのかを検討することにより、顧客置き去りのやみくもな施策ではなく、真に顧客に求められる方策をとることが可能となるでしょう。
まとめ
もしもPOSデータがなければ、店舗の売り上げや顧客の情報は、運営する人材が肌感覚でなんとなく判断しているものでしょう。時にその判断は思い込みや勘違いのために、本当の顧客ニーズからかけ離れたものとなってしまう可能性もあります。
しかし、POSデータは実際の顧客の購買行動そのものです。このデータを分析することで、本当の顧客の行動やニーズを把握することができます。店舗を経営しているという方は、ぜひPOSシステムを導入して、愛される店づくりに役立ててみてはいかがでしょうか。