「原価率は下げるもの」という常識にとらわれ、どのお店も同じようなポーション調整に走りがちです。しかし、本当に必要なのは「1品だけあえて原価率50%にする」という逆転の発想でした。
本記事では、実在する店舗のリアルな数値をもとに、年540万円の利益インパクトを生み出す「最強の売り商品」の作り方を解説します。今週末からすぐに実践できる3ステップと、絶対に陥ってはいけない罠まで包み隠さずお伝えします。
目次
採点の内訳は、この施策の正直な姿です
まず点数の中身からお見せします。
- インパクト10点:後ほどお見せする試算で、年におよそ540万円。満点を付けました。
- コスト9点:試作3万円、選定と開発の手間8万円、メニューの刷り直し2万円、卓上案内1万円、週次の記録26,000円で、年におよそ17万円。年30万円以内です。
- 時間5点:利益の数字に表れるまで半年かかるため、辛めに採点しました。
注目していただきたいのは、インパクトの10点です。205個の中で満点は限られています。「1品の値段を変えるだけ」の施策でこの点数になるのは、この1品が売上そのものではなく、来店回数を動かすからです。
一方で、時間の5点は正直に受け取ってください。注文率は出した翌週から数えられますが、その1品が名物として覚えられ、来店回数が動くまでには時間がかかります。今月やって今月増える施策ではありません。そこだけは覚悟してください。
売上の施策なのに、正体は「リピート」の施策です
この施策がある「場所」にも注目してください。
利益改善のロジックツリーで言うと、「利益を増やす→売上を上げる→客数を増やす→リピート客を増やす→顧客満足を上げる」の枝にあります。値付けの枝でも、原価の枝でもありません。
ここが大事なところです。売り商品は、安売りの話ではありません。もう一度来ていただくための話です。その1品では利益を取らず、代わりに「また来る理由」を作る。だから枝は「リピート客を増やす」なのです。
この位置づけを取り違えると、あとで出てくる2つの罠にそのまま落ちます。売り商品は、いまのお客様に安く売るためのものではなく、次に来ていただくための投資だと覚えてください。
なぜ1品だけで来店回数が動くのか?理由と仕組み
お客様は、値段ではなく「相場との差」を見ています

メニューを開いたお客様が見ているのは、値段そのものではありません。値段と量を、ご自分の頭の中にある相場と比べています。唐揚げがいくらなら安いか、お客様はだいたいご存じです。生ビールがいくらなら高いか、ハラミがいくらなら得か。日常的に外食される方なら、ほとんどの定番商品に「相場」を持っています。
この比べっこは、メニューを開いて数秒で終わります。じっくり計算されるわけではありません。「ここは安い」か「普通」か、その判定だけです。
そして、この判定に勝てる商品が1品もないお店は、「普通のお店」として覚えられます。普通のお店には、もう一度行く理由がありません。味が悪かったわけでも、接客が悪かったわけでもない。ただ、次に思い出す引っかかりがなかった。それだけで、二度と会えないお客様が生まれます。
全品を少しずつ安くしても、判定は変わりません
ここで、多くのお店がやってしまうことがあります。全体を少しずつ安くする、という選び方です。
数十円ずつ、あちこちの商品を下げる。合計するとかなりの粗利を手放しているのに、お客様の判定は「普通」のままです。数秒で終わる比べっこでは、数十円の差は見えないからです。
判定を変えるのは、はっきり勝つ商品が1品あるかどうかです。「これでこの値段?」と感じていただける1品。それが1品あるだけで、お店全体の印象が「安いお店」寄りに動きます。逆に言えば、1品に集めなければ意味がありません。
売り商品とは、比べっこにわざと勝ちにいく1品です
売り商品というのは、この比べっこにわざと勝ちにいく1品のことです。
やることは単純です。原価の2倍で値段をつける。原価率50%です。
原価1,000円の商品なら、売価2,000円。いつもの値付け(原価率34%)なら約2,900円になる商品を、2,000円で出します。手放す粗利は1皿900円です。
電卓は要りません。原価を2倍にするだけです。そして、その1品では利益を取りません。手放す900円は、損ではなく、もう一度来ていただくための投資だと考えてください。
原価率50%が許される理由——原価率は「お会計全体」で守る
ここでよく聞かれるのが、原価率50%なんて許されるのか、という質問です。
許されます。理由はひとつで、守るべき原価率は、1品ごとの数字ではなく、お会計全体の数字だからです。
売り商品を頼まれたお客様は、その1品だけで帰られるわけではありません。ドリンクも、ほかの一品も一緒に注文されます。お会計が終わった時点の原価率が守れているなら、そのうち1品が50%でも、お店の利益は減りません。
この考え方の切り替えが、この施策のいちばん大事なところです。1品ごとの原価率表に赤を入れる管理は、原価率を下げるためには正しい。けれども「どの商品で選ばれているか」を作る管理にはなりません。1品だけ、意図的に表から外す。そう決めるのが売り商品です。
安いお店になる話ではありません
先に、いちばん多い勘違いを潰しておきます。
安いお店になれ、という話ではありません。安いと思っていただきたいのは1品だけで、残りのメニューはいつもの値付けのままで構いません。
全品を安くすれば、それは値下げです。粗利が丸ごと減って、戻せなくなります。売り商品は、1品に集中して投資して、残りのメニューには利益を取り続けてもらう形です。だからこそ「リピート客を増やす」の枝に入っていて、値下げの施策とは別物なのです。
数字で見るシミュレーション:年間利益と導入コスト
年にもう1回で、年およそ540万円の試算
数字にします。私のお店はお客さまが月におよそ830人(月商500万円÷客単価6,000円)、年間でのべおよそ10,000人です。
そのうちリピートのお客様が7割としたら、のべ約7,000人。年に4回来てくださるとすると、実人数はおよそ1,700人です。
この1,700人が、年にもう1回来てくださったとします。1,700人×客単価6,000円で、売上は約1,000万円。原価34%と人件費30%を引いた36%が利益ですから、およそ370万円です。
これに、売り商品そのものの粗利が乗ります。月の組数はおよそ280組(830人÷3人)で、年におよそ3,400組。そのうち2組に1組が売り商品を注文されると年1,680皿。1皿の粗利は2,000円−1,000円で1,000円ですから、年におよそ170万円です。
合わせて、年におよそ540万円。これがインパクト10点の根拠です。
大事なのは「月にもう1回」ではないことです。年に、もう1回でこの金額になります。年4回来てくださっている常連のお客様に、もう1回足していただく。その1回を作るための1品だと考えてください。
かかるお金は、年およそ17万円

かかるお金も見ておきます。
- 試作:10回×3,000円で3万円
- 選定と開発の手間:40時間×2,000円で8万円
- メニューの刷り直し:2万円
- 卓上案内:1万円
- 週次の記録:15分×52週=13時間×2,000円で26,000円
- 合計:年におよそ17万円
年30万円以内に収まるので、コストは9点です。新しい設備も、人も要りません。年17万円で年540万円の可能性に挑めるなら、やらない理由が無い金額だと思います。
実践!売り商品を作るための3ステップ
ステップ1:日曜の営業後に、伝票を数えて候補を3品に絞る
手順に落とします。用意するものは、先週1週間分の伝票と、A4の紙1枚と、鉛筆だけです。3ステップです。
最初のステップは、日曜の営業後です。店長が先週1週間分の伝票を積んで、商品ごとに正の字で注文数を数えます。多い順に20品を紙に書き出して、その横に1皿の原価を書く。これだけです。
なぜ「注文の多い順」から選ぶのか。売り商品は、お客様の目に触れる回数が多くなければ意味がないからです。誰も頼まない商品を安くしても、比べっこは起きません。すでに注文が入っている商品の中から選びます。
【候補を選ぶ3つの条件】
20品の中から、候補を3品に絞ります。条件は3つです。
- お客様が他のお店と値段を比べられる商品であること:焼肉ならハラミ、居酒屋なら唐揚げです。そのお店だけの創作料理は、比べる相手がいないので「これでこの値段?」が成立しません。お客様の頭の中に相場がある商品を選んでください。
- 注文が入ってから1分以内に出せること:売り商品は必ず出数が増えます。手のかかる商品を選ぶと、金曜の夜に厨房が止まります。出数が増えても回る商品であることが条件です。
- メインと食い合わない場所にあること:焼肉店ならお肉ではなく、前菜か〆です。お肉を売り商品にすると、ほかのお肉の注文が減って、増えるはずの売上が入れ替わるだけで終わります。メインは利益を取る場所として残してください。
この3つとも○が付く商品が、候補になります。3品まで絞れたら、あとは試作して1品に決めます。
★同じ1枚の紙で、「無くす側」も見えます
いま書いた紙の下のほうには、注文が少なくて原価率も高い商品が並びます。これは別の施策「コスパの悪い商品を無くす」の対象で、こちらもA評価が付いています。1枚の紙で、作る側と無くす側が同時に見える。これが、この手順のいいところです。売り商品を作るついでに、メニューの整理の候補も手に入ります。
ステップ2:翌週の月曜に、原価の2倍で値段を決める
2つ目のステップは、翌週の月曜です。選んだ1品の原価が1,000円なら、売価は2,000円。原価率50%です。
繰り返しますが、電卓は要りません。原価を2倍にするだけです。
いつもの値付けなら約2,900円になる商品を2,000円で出すので、お客様から見てはっきり安くなります。その差の900円は、損ではなく、もう一度来ていただくための投資です。
値付けのときに迷いがちなのが、「端数をどうするか」です。原価の2倍が基準ですから、そこから大きく動かさないでください。基準より下げると、投資が値下げに近づきます。基準より上げると、比べっこに勝てなくなります。
毎月1回、お会計全体の原価率を確認する
売り商品を出したら、毎月1回だけ確認します。
「その月の食材の仕入れ合計 ÷ 月商」
これだけです。この数字が、始める前から1ポイント以内の上がり方で収まっていれば、売り商品は正しく効いています。合格です。
それ以上に上がっていくなら、原因は売り商品ではありません。ほかの商品の出方が変わっているので、そちらを見てください。売り商品は1品ですから、お会計全体の原価率をそこまで押し上げる力はありません。ここを取り違えて売り商品を止めてしまうのが、いちばん残念なパターンです。
ステップ3:毎週月曜の営業前に、注文率を数える
3つ目のステップは、出した翌週から始まります。毎週月曜の営業前に、店長が先週の売り商品の注文数と、先週の組数をノートに書いて、割り算をするだけです。
目標は、2組に1組。半分のお客様が頼んでくださっていれば、その1品はもう、お店の名物になりかけています。数えるのは週に1回で十分です。毎日追いかける必要はありません。15分あれば終わります。
注文率が落ちたときに直すのは、値段ではありません
3組に1組を2週続けて下回ったときに、直すのは値段ではありません。置き場所と、一言です。
- メニューの1ページ目の右上に移す
- ご案内のときに「うちはこれが名物です」と先に言う
これで戻ることが、ほとんどです。値段をさらに下げるのは、いちばん最後の手段です。安くして数が出ても、商品名で覚えていただけなければ、次の来店にはつながりません。売り商品の目的は、数を出すことではなく、「あのお店といえば、あれ」と覚えていただくことです。
運用上の注意点と成功のポイント
売り商品は、原価率から切り離して数えてください
ここで、私自身の失敗をひとつお話しします。
和食の居酒屋をやっていたときのことです。豪華な盛り合わせを、1,280円で出しました。原価率が100%を超えることもある、完全な売り商品です。全卓に置いて、お客様の満足をしっかり取ろうと、スタッフにも指導しました。
ところが、何か月たっても、ほとんど売れませんでした。理由は、裏での抵抗でした。私は同時に、「原価率を守れ」とも指導していたんです。原価率の高い商品を売るほど、お店の原価率は上がります。だからお店は、この盛り合わせを売りたがらなかった。
そのとき気づきました。売り商品の原価率は、切り分けて見なければいけない。
- 売り商品は、販売個数を追う
- 売れ筋を順位で分けるABC分析も、原価率の計算も、売り商品を除いて行う
この分け方をしないと、売り商品は育ちません。どんなに良い1品を作っても、売る側が「売ると数字が悪くなる」と感じていたら、卓に置いただけで終わります。スタッフに伝える言葉も、ここで変えてください。「この1品だけは、原価率ではなく個数で見る」と、先に宣言しておくことです。
1品が変わると、メニュー全体の見え方が変わります
反対に、効いたときの話もしておきます。以前、大盛りの商品を作ったことがあります。見た目のインパクトがありました。
すると、その1品だけの話ではなくなるんです。普通のメニューまで、お客様を呼ぶメニューになりました。
1品が変わると、メニュー全体の見え方が変わる。これが、1品に集中して投資する意味です。全品を少しずつ安くしても起きないことが、1品に集めると起きます。
絶対に避けるべき「2つの罠」
罠1:いま一番出ている商品を、値下げして売り商品にする
ここからは、やってはいけない形を2つお話しします。手順が分かっていても、この2つで失敗するお店があります。
ひとつ目は、いま一番出ている商品を値下げして売り商品にすることです。これが、いちばんやりたくなる形です。うちならカルビを下げることになります。
絶対にやめてください。
一番出ている商品を値下げすると、私のお店の規模では、年におよそ290万円の粗利が消えます。カルビを1,480円から1,000円にすると1皿480円、月500皿で月に24万円、年で約290万円です。その代わりに増えるお客様は、ほとんどいません。もともと頼んでくださっていた方が、安く頼まれるようになるだけだからです。
判断の線は、はっきりしています。
- 人気商品の値下げ = いまのお客様へのサービス
- 売り商品 = 次に来ていただくための投資
同じ原価率50%でも、意味がまったく違います。だから売り商品は、いまの人気商品を下げて作るものではなく、新しく1品つくるものです。人気商品には値段を触らずに、そのまま利益を取り続けてもらいます。
罠2:売り商品を2品、3品と増やす
ふたつ目の罠は、売り商品を増やすことです。1品でうまくいくと、次を作りたくなります。ここがいちばん危ないところです。
数字で見ます。
- 1品で手放す粗利:月140皿×900円=月に約13万円。年におよそ150万円
- 年にもう1回来ていただいて増える利益:年におよそ370万円
- 3品にしたときに手放す粗利:月420皿×900円=月に約38万円。年におよそ450万円
1品なら、150万円に対して370万円ですから、十分に回収できます。ところが3品にすると、手放す粗利450万円が、増える利益370万円を追い越します。増やした瞬間に、利益を増やす施策が、利益を減らす施策に変わります。そして、それ以上に困るのは、お客様の頭に3つとも残らないことです。
【失敗事例】全部を売り商品にして、2年で潰したお店の話
これには、もっと痛い失敗があります。ステーキとハンバーグのお店でした。料理に数百円足すと、サラダとアイスとデザートが食べ放題になる仕組みです。その食べ放題が、原価100%近い売り商品でした。
ところが、全部の商品を売り商品のように売ってしまいました。原価率は、いつも60%を超えていました。売っても売っても、利益が出ない。売上はあるのに赤字で、そのお店は2年で潰すことになりました。
売り商品は、お店の名刺だと思っています。名刺を3枚渡されても、覚えられません。1枚だからこそ、覚えていただけます。「あのお店といえば、あれ」。そう言っていただける1品を、1つだけ作ってください。
【業態別】売り商品の置き場所と注意点
お店の業態によって、置き場所と上限の原価率を補正してください。
- ▼ 居酒屋
- 比べられる商品がはっきりしています。唐揚げ、だし巻き玉子。原価率50%のままで構いません。
ただし、生ビールは選ばないでください。ほぼ全部の組が頼まれるので、粗利が一気に削れます。頼む組と頼まない組が分かれる商品を選ぶ。これが基準です。 - ▼ ラーメン店
- 一杯で完結するので、売り商品は麺そのものではなく、トッピングかご飯ものに置きます。原価の2倍という考え方は、そのままで大丈夫です。
- ▼ カフェ
- 客単価が低いぶん、原価率50%は重すぎます。40%までにとどめて、そのぶん見た目で勝ちにいってください。写真に撮りたくなる見た目は、値段以外の比べっこに勝つ方法です。
- ▼ 焼肉店
- 私と同じ焼肉店なら、前菜か〆の一品です。お肉は、利益を取る場所として残します。
半年ロードマップ:成果が出るまでのスケジュール
採点で時間5点=「数字に表れるまで半年」とした道のりを、時系列にしておきます。
- 今週の日曜:営業後に、先週1週間分の伝票を積んで、注文の多い商品を20品、紙に書き出す。横に1皿の原価を書く。
- 翌週の月曜:3条件で候補を3品に絞り、試作して1品に決める。原価の2倍で値段を決める。
- 出す前に:スタッフへ「この1品だけは原価率ではなく個数で見る」と宣言する。ABC分析と原価率の計算から除く。
- 出した翌週から毎週月曜:注文数と組数をノートに書いて、注文率を数える。目標は2組に1組。
- 毎月1回:食材の仕入れ合計を月商で割る。始める前から1ポイント以内なら合格。
- 3組に1組を2週続けて下回ったら:置き場所と一言を直す。値下げは最後の手段。
- 半年後:利益の数字に表れ始めるのを確認する。
途中で「注文は入っているのに、売上が変わらない」と感じる期間があります。それで合っています。売り商品の粗利は薄いので、その1品自体では売上を押し上げません。効くのは来店回数ですから、時間がかかります。だからこそ、毎週月曜の注文率を道しるべにして進んでください。
★注文数を数える手間は1週間分で2時間
商品ごとの注文数を、1週間分の伝票から全部数えると2時間かかります。お会計の記録から商品別の注文数が自動で出る環境なら1分です。ただ、まずは伝票と鉛筆から始めましょう。20品を書き出す2時間は、いまのお店が何で選ばれているかを知るための大切な2時間です。手で数えると、注文の並び方に気づくことができます。
よくある質問(FAQ)
Q. 原価率50%の商品を作ると、お店の原価率が悪化しませんか?
A. 守るべき原価率は、1品ごとではなくお会計全体の数字です。毎月1回、食材の仕入れ合計を月商で割って、始める前から1ポイント以内の上がり方に収まっていれば問題ありません。それ以上に上がるなら、原因は売り商品ではなく、ほかの商品の出方です。
Q. 売り商品は、いまの一番人気の商品を安くすればいいのでは?
A. おすすめしません。私のお店の規模では、一番出ている商品を値下げすると年におよそ290万円の粗利が消えて、その代わりに増えるお客様はほとんどいません。もともと頼んでくださっていた方が、安く頼まれるようになるだけです。売り商品は新しく1品つくってください。
Q. うまくいったら、2品目を作ってもいいですか?
A. 1品でとめてください。私のお店の規模では、1品で手放す粗利が年におよそ150万円、年にもう1回で増える利益がおよそ370万円で、1品なら回収できます。ところが3品にすると手放す粗利が年におよそ450万円になり、増える利益を追い越します。お客様の頭にも、3つとも残りません。
Q. 創作料理を売り商品にしてはいけませんか?
A. 比べる相手がいないので「これでこの値段?」が成立しません。お客様の頭の中に相場がある定番商品を選んでください。焼肉ならハラミ、居酒屋なら唐揚げです。
Q. ドリンクを売り商品にするのはどうですか?
A. 居酒屋の生ビールは選ばないでください。ほぼ全部の組が頼まれるので、粗利が一気に削れます。頼む組と頼まない組が分かれる商品を選ぶ、というのが基準です。
Q. 注文率が上がりません。どうすればいいですか?
A. 3組に1組を2週続けて下回ったときに直すのは、値段ではありません。メニューの1ページ目の右上に移して、ご案内のときに「うちはこれが名物です」と先に言ってください。これで戻ることがほとんどです。
Q. それでも出ないときは、値下げしていいですか?
A. いちばん最後の手段です。安くして数が出ても、商品名で覚えていただけなければ、次の来店にはつながりません。まず置き場所と一言、それから商品そのものの見直しの順で考えてください。
Q. スタッフが売り商品を売ってくれません。
A. 原価率の指導と矛盾していないか確認してください。原価率の高い商品を売るほど、お店の原価率は上がります。「この1品だけは原価率ではなく個数で見る」と先に宣言し、ABC分析と原価率の計算から売り商品を除いてください。
Q. 効果はいつから分かりますか?
A. 注文率は出した翌週から毎週分かります。お会計全体の原価率は毎月1回。利益の数字に表れるまでは半年を見ておいてください。
Q. 何から始めればいいですか?
A. 今週の日曜の営業後に、先週1週間分の伝票を積んで、注文の多い商品を20品、紙に書き出してください。値段を決めるのも、試作をするのも、来週からで間に合います。
まとめ:原価率を上げていいのは、お店に1品だけ
要点を3つにまとめます。
- 原価率を上げていいのは、お店に1品だけ。守るべき原価率は、1品ごとではなくお会計全体の数字です。
- その1品の値段は、原価の2倍。原価率50%。原価1,000円なら売価2,000円で設定します。
- 増やさない。売り商品は1品で守る。1品なら回収できるが、3品にすると手放す粗利が増える利益を追い越します。
明日の1歩はこれだけです。先週1週間分の伝票を積んで、注文の多い商品を20品、紙に書き出してください。値段を決めるのも、試作をするのも、来週からで間に合います。20品を並べるだけで、いまのお店が何で選ばれているかが見えてきます。
最後に、居酒屋時代の話をひとつ。客単価2,300円ほどのお店で、インドマグロの中トロを1,800円で出しました。これを目当てに来てくださるお客様が、本当にいたんです。値段ではなく、「あれを食べに行こう」で選ばれる。売り商品の力を、そのとき知りました。
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