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利益改善205施策の11位は、「いい接客を増やす」ではなく「悪い接客をゼロにする」でした

接客を良くしたい。そう思ったとき、多くのお店が最初に考えるのは、笑顔の研修、言葉づかいのマニュアル、感じのいいスタッフの採用です。「いい接客」を増やせば、お客様は増えるはず——そう考えるのは自然なことですし、私も店長時代、長くそう信じていました。

ところが、飲食店の利益改善策を205個すべて書き出して採点した結果、上位に入ったのは「いい接客を増やす」ではありませんでした。11位タイに入ったのは、「サービスの悪い接客を無くす」。82.5点のS評価です。

私は利益改善策の一つひとつを、「年間いくら利益が増えるか」「いくらかかるか」「効果が出るまで何か月か」の3つの基準で、100点満点の採点をしました。205個の中の11位ですから、ほとんどの施策より上です。しかも、かかるお金は0円。研修費も採用費も要りません。

申し遅れました。私は飲食店の店長を10年、経営を25年、コンサルタントを15年やってきました。今は飲食店専用のPOSレジを作る会社を経営しながら、60席の焼肉店を自分で経営しています。この記事の試算はすべて、その実在するお店(月商500万円・客単価6,000円・原価率34%・スタッフ10名)の数字で行います。

この記事では、なぜ「いい接客を増やす」より「悪い接客をゼロにする」が先なのかを数字で示し、一円もかけずにゼロにする3ステップ、そして私の店長時代の話までお伝えします。読み終わる頃には、明日の営業前にスタッフと何を話せばいいかが、はっきり決まっているはずです。


飲食店の利益改善における「悪い接客を無くす」の採点内訳

まず点数の中身からお見せします。

  • インパクト8点:後ほどお見せする試算で、週に3回の悪い接客が起きているお店なら、利益で年間400万円を超えるクラスの効果
  • コスト10点(満点):「やらないこと」を決めて守るだけ。かかるお金は0円
  • 時間5点:お客様の再来店として数字に表れるまで、およそ半年と辛めに採点

注目してほしいのはコストの10点です。いい接客を増やすには、センスのあるスタッフの採用や研修が要ります。お金と時間がかかります。ところが悪い接客をゼロにするのは、「やらないこと」を決めて守るだけ。特別な才能は要りません。だからこの施策は、コストが満点なのです。

一方で、時間の5点は正直に受け取ってください。10か条を作った週から悪い接客の件数は減り始めますが、それが「お客様がまた来てくださった」という数字になるまでは半年。即効性はないけれど、止めた流出は止まったまま。そういう性格の施策です。


接客の施策なのに、正体は「リピート対策」です

この施策がある「場所」にも注目してください。

利益改善のロジックツリーで言うと、「利益を増やす→売上を上げる→客数を増やす→リピート客を増やす→お客様の不満を無くす」の枝にあります。接客の話なのに、接客や人材の枝ではなく、リピートの枝。ここに、この施策の本質があります。

悪い接客をゼロにしても、新しいお客様は増えません。増えるのは「もう一度来てくださるお客様」です。一度来てくださったお客様が戻ってこなくなる原因を、接客の中から取り除く。新規のお客様を集める施策ではなく、せっかく来てくださったお客様を失わないための施策なのです。


お客様の記憶は、加点より減点が長持ちする理由

お客様の記憶は、加点より減点が長持ちする

考えてみてください。先週行ったお店で、感じの良かった店員さんの顔を思い出せるでしょうか。難しいと思います。では、呼んでも来なかったお店、注文を間違えられたお店はどうでしょう。こちらはお店の名前ごと覚えている。

お客様の記憶は、加点より減点の方がずっと長持ちします。だから、いい接客を10回積み上げても、悪い接客が1回あれば、その日の印象は「悪かった」で上書きされる。これが、いい接客を「増やす」より先に、悪い接客を「ゼロにする」方が効く理由です。

私のお店で数えてみます。10名のスタッフが、1日1回ずつ小さな減点をしていたら、月に300回。830人のお客様のうち、3人に1人が何かしらの減点に当たっている計算です。1人1日1回なら「そのくらいは仕方ない」と思えます。でもお店全体で見ると、3人に1人のお客様が減点を持ち帰っている。この数字を見て、私は考えを改めました。


悪い接客1回で、年間およそ370万円が消える試算

数字にします。私のお店はお客様が月におよそ830人(月商500万円÷客単価6,000円)。悪い接客が1回あって、常連になるはずだった方がおひとり消えたとします。年に4回、客単価6,000円なら、おひとりで年間2万4,000円です。

でも焼肉店にひとりで来る方は少ない。平均3人のグループなら、1回の悪い接客で消えるのは3人、年間7万2,000円です。これが週に1回起きていたら、年間52組。52組×7万2,000円=年間およそ370万円の売上が、お客様の文句も聞こえないまま消えていきます。

失った売上のうち、原価34%と人件費30%を引いた36%が利益です。悪い接客が週に3回起きているお店なら、売上で1,120万円、利益で400万円を超えます。私のお店で年間400万円クラスと採点した、インパクト8点の根拠です。

この流出の怖いところは、クレームにならないことです。呼んでも来なかったお客様は、その場で怒鳴りません。静かに会計をして、次から別のお店を選ぶだけです。今日の売上は下がらず、「来月来るはずだった来店」が消えていく。だから、悪い接客は起きた瞬間に数えておく必要があります。後から数えることはできないからです。


「悪い接客」とは何か——気持ちではなく動作で定義する10選

では「悪い接客」とは何か。「感じが悪い」「態度が悪い」という気持ちの言葉では、直しようがありません。動作で言います。

  • 呼んでも来ない。目が合わない
  • 「はい」の返事がない
  • 注文の聞き間違い、厨房への伝え忘れ
  • 提供順のミス。後から来たテーブルに先に料理が出る
  • スタッフ同士の私語、スマホ
  • 料理を置くときに音を立てる
  • 空いたお皿を下げない
  • お待たせしたのに、一言がない
  • 「少々お待ちください」と言って、戻らない
  • お会計のあと、お見送りがない

全部で10個。どれも、才能がなくてもゼロにできることです。笑顔のセンスや、気の利いた一言は要りません。「やらない」と決めて、守るだけ。だから0円でできるのです。


ステップ1:今週の営業前に「やらないこと10か条」を作る

手順に落とします。道具は紙のノート1冊だけです。3ステップです。

最初のステップは、店長が営業前の15分、スタッフ全員に「自分がお客様として嫌だった接客」を1人1つ言ってもらうことです。10名なら10個。「呼んでも来ない」「注文を間違える」「お見送りがない」——出てきたものを、動作の言葉で10個に絞って紙に書き、レジ横とキッチンの入口に貼ります。

紙はA4を1枚。10か条以外は書きません。「感じよく」「笑顔で」のような気持ちの言葉は使いません。できたかどうか、誰が見ても判定できる言葉にするのがコツです。「笑顔で」は判定できませんが、「お見送りがない」は判定できます。

うまく出てこないお店は、さきほどの10個をそのまま使って構いません。大事なのは、完璧な10か条を作ることではなく、今週、貼ることです。

【実践用】15分のミーティング台本

ステップ1の15分を、そのまま使える台本にしておきます。

最初の2分で、店長がこう切り出します。「お客様として行ったお店で、嫌だった接客を1人1つ教えてください。うちのお店の話ではなく、自分がお客様だったときの話で構いません」。自分のお店の話にすると、誰かを責める空気になります。お客様の立場の話にすると、全員が正直に話せます。

次の8分で、1人ずつ順番に言ってもらい、店長がそのまま紙に書きます。ここでは「それはうちでは起きていない」と言わないこと。出てきたものを全部書きます。

残りの5分で、気持ちの言葉を動作の言葉に直しながら10個に絞ります。「感じが悪い」と出たら、「どういう動作のとき、そう感じましたか」と聞き返す。「呼んでも来なかった」「目を合わせてくれなかった」。ここまで落とせば、判定できる言葉になります。似た意見はひとつにまとめ、10個になったらA4に清書して、レジ横とキッチンの入口に貼ります。

この15分で、スタッフは「自分もお客様だったときに嫌だったこと」を、自分の言葉で言っています。人から押しつけられた規則ではなく、自分たちで決めたやらないこと。だから守れます。


ステップ2:毎日営業前の3分で1か条を読み「見張り役」を決める

営業前のミーティングで、店長が10か条から1つを読み上げ、「今日はこれをゼロにします」と宣言します。3分で終わります。

そして、その日の見張り役を1人決めます。店長でなくて構いません。見張り役は、営業中に10か条のどれかが起きたら、ノートに「日付・何が起きたか・どのテーブルか」を1行書く。名前は書きません。誰がやったかではなく、何が起きたかを数えるためです。

見張り役は1週間ごとに交代します。全員が一度は見張り役をやると、自分の接客を外から見る癖がつきます。「お皿を下げていないテーブルがある」と気づける人は、自分のテーブルのお皿も下げられるようになります。見張り役は、記録係であると同時に、一番の学習の場でもあるのです。


ステップ3:毎週月曜の営業前に集計し、仕組みで直す

3つ目のステップが、週に1回の集計です。先週の件数を10か条ごとに数えて、一番多かった1つを今週のテーマにします。集計だけなら15分で終わります。

そして直すのは人ではなく仕組みです。「呼んでも来ない」が多ければ、テーブル担当の割り方を変える。「提供順のミス」が多ければ、伝票に来店時刻を書く欄を作る。「空いたお皿を下げない」が多ければ、ホールを回る順番を決める。件数が多い項目は、その人の性格ではなく、お店の仕組みに穴があるサインです。

数えた件数は、貼ってある10か条の横に毎週書き込みます。数字が下がっていくのを全員が見えることが、叱るよりずっと効きます。私のお店の60席なら、週の件数が10件から3件、3件からゼロ。この3週間で、先ほどの試算の年間370万円が止まります。

ただし、お客様の再来店として数字に表れるまでは半年。時間の点数を5点と辛めに付けた理由です。

見張り役が使う記録ノートの型

見張り役のノートは、1行で足ります。型を置いておきます。

  • 書くこと:日付/何が起きたか(10か条の番号でも可)/どのテーブルか
  • 書かないこと:誰がやったか

たとえば「9月10日/9番(少々お待ちくださいと言って戻らない)/4番テーブル」。これだけです。営業中に1行書くのに、10秒もかかりません。

ポイントは、毎週月曜に10か条の横へ「今週:呼んでも来ない3件、提供順ミス2件、お見送りなし1件」のように書き込みます。数字が並ぶと、どこから直せばいいかが全員に見えます。個人の性格の話だったものが、お店の数字の話に変わる瞬間です。


店長時代の体験談——優しい店長ではありませんでした

ここで、私の店長時代の話をさせてください。

人はいいけれど、話し方や接客に問題があったスタッフがいました。色々な話をして、そのスタッフがお客様に褒められたとき、本当にうれしかった。

特に、初めてアルバイトをするスタッフの教育には心を使っています。初めて働く環境がダラダラしていると、その後の人生で働くことがダメになってしまう。働く意義は何か。お客様に喜んでいただくとは何か。お金を頂戴して働くということは、誠心誠意お客様に尽くすこと。持てる力を余すことなく使わなければいけない。そう教えました。

優しい店長ではなかったと思います。

でも、いま振り返ると、私が教えていたのは「いい接客のやり方」ではありませんでした。「お金を頂戴して働くとはどういうことか」という土台と、「これはやらない」という線引きです。10か条は、その線引きを紙に書いて、全員で見えるようにしたものです。店長ひとりの目で見ていたものを、お店の仕組みにする。それが、この記事の3ステップです。


失敗するお店がハマる2つの罠

手順が分かっても、うまくいかないお店があります。理由ははっきりしていて、2つの罠があります。

罠1:いい接客の研修から始める

ひとつ目が、いい接客の研修から始めることです。順番が逆です。研修で笑顔や言葉づかいを磨いても、「呼んでも来ない」「注文を間違える」が残っていれば、お客様の記憶に残るのはそちらです。

外部の接客研修を1人2万円で10名分受ければ20万円。しかもその効果は、悪い接客1回で消えます。研修の効果はスタッフの入れ替わりで薄れますが、10か条は紙に残ります。新しいスタッフが入っても、レジ横の紙を読めば、このお店で「やらないこと」が分かる。

まずゼロにする。研修はその後で十分間に合います。土台のない場所に建てた家は、風が吹くたびに揺れます。

罠2:起きた悪い接客を個人の責任にする

ふたつ目の罠が、起きた悪い接客を個人の責任にすることです。

ノートに名前を書いて叱ると、スタッフは隠すようになり、次に辞めます。10名のお店で1人辞めれば、求人広告に5万円、教育のやり直しに20時間。時給2,000円換算で4万円ですから、合わせておよそ9万円。叱った1回の代償がこれです。

だから記録は「何が起きたか」だけ。直すのは仕組み。これが10か条を長続きさせる一番のコツです。

私も店長時代、優しい店長ではなかったと書きました。でも、教えていたのは「お金を頂戴して働くとは何か」であって、失敗した人を名指しで責めることではありませんでした。厳しさの向け先は、人ではなく、お店の基準です。基準を厳しく、人には仕組みで応える。この順番なら、スタッフは隠さず、辞めません。


「悪い接客を無くす」は「お客様に何でも従う」ではありません

「悪い接客を無くす」は、「お客様に何でも従う」ではありません

ひとつ、大事な補足です。

「悪い接客を無くす」は、「お客様に何でも従う」ではありません。

私はこれまで「クレームは絶対に起こさない」という管理をしてきました。それを変えることが、いま大事だと思っています。カスハラを経験すると、スタッフは辞めていきます。特に居酒屋のように、アルコールが入る業態では、毅然と対応するガイドラインが必要です。

10か条は、お店がお客様に約束する「やらないこと」です。同時に、お店がスタッフに約束する「ここから先はお断りする」という線も、1枚作っておいてください。この2枚がそろって、スタッフは安心して10か条を守れます。守る人を守らない基準は、長続きしません。


飲食店・業態別の10か条アレンジ方法

お店の業態によって、10か条の中身を補正してください。

居酒屋の場合

いま話した通り、10か条とセットで「ここから先はお断りする」の線引きを1枚作ってください。アルコールが入る業態は、悪い接客をゼロにする努力と、スタッフを守る線引きが、必ずセットになります。

ラーメン店やカフェなど滞在時間が短い業態の場合

「呼んでも来ない」より、「返事がない」「お見送りがない」の減点が大きい業態です。一言の「ありがとうございました」だけでゼロにできる項目が多いので、10か条もそこに寄せてください。

ホテルや高単価のお店の場合

お客様の期待値が高いぶん、「料理を置くときの音」のような小さな項目まで10か条に入れてください。単価が高いほど、小さな減点が記憶に残ります。

焼肉店の場合

私と同じ焼肉店なら、「網の交換が遅れる」が一番の減点です。10か条の1番目に入れてください。焼肉のお客様は網を見ています。網が焦げたまま放置されている時間は、そのまま「気にかけてもらえていない時間」として記憶に残ります。


10か条の運用がお店全体にもたらす3つの効果

この施策の効果は、悪い接客の件数が減ることにとどまりません。少し引いた視点で3つ挙げます。

  • 悪い接客が「個人の性格」ではなく「お店の数字」になる:10か条を作った日から、「あの子は気が利かない」という話が、「今週は呼んでも来ないが3件」という話に変わります。性格は直せませんが、数字は下げられます。
  • スタッフが自分の接客を外から見るようになる:見張り役を全員が経験すると、「お皿が下がっていないテーブル」に気づく目が育ちます。この目は、10か条に書いていない場面でも働きます。
  • スタッフが辞めにくくなる:名前を書かず、仕組みで直すお店では、失敗が隠されません。隠さなくていい職場は、居心地がいい。1人辞めるたびに9万円と20時間を失っていたお店にとって、これは接客改善と同じくらい大きな効果です。

半年ロードマップ:数字に表れるまでの時系列ステップ

採点で時間5点=「数字に表れるまで半年」とした道のりを、時系列にしておきます。

  • 今週:営業前15分で、スタッフ全員から「嫌だった接客」を1つずつ集め、動作の言葉で10か条にしてレジ横とキッチンの入口に貼る
  • 翌週から:毎日3分で1か条を読み上げ、見張り役を決めて1行記録。月曜に件数を数え、一番多い1つをテーマに、仕組みを1つ直す
  • 3週間後:私のお店なら、週の件数が10件→3件→ゼロ。年間370万円の流出が止まる
  • 1〜2か月目:居酒屋なら「お断りの線引き」を1枚追加。業態別に10か条を補正する
  • 3〜5か月目:件数がゼロに近づいたら、10か条の中身を入れ替える。「網の交換」のような、お店固有の項目を育てる
  • 6か月目:常連のお客様の数と再来店の動きを眺めて、効き始めのサインを確認する

途中で「件数は減ったのに、売上が変わらない」と感じる期間があります。それで合っています。この施策の効果は「増える」ではなく「消えるはずだったお客様が消えなくなる」なので、実感は遅れてやってきます。だからこそ、毎週月曜の件数を道しるべにして進んでください。


効果の答え合わせは「そのテーブルのお客様が再来店したか」で測定する

ここまで読んで、「うちもやってみよう」と思ってくださった方に、先にお伝えしておきたいことがあります。

週1回の件数集計だけなら、手作業でも15分で終わります。まずはノート1冊から始めてください。

ただ、その先があります。ノートの件数と「そのテーブルのお客様がまた来てくれたか」を突き合わせる作業です。悪い接客が起きたテーブルのお客様が、その後も来てくださっているか。それが分かれば、10か条の効果を、件数ではなく再来店という本当の数字で確かめられます。

この突き合わせは、紙と伝票だと月に2時間かかります。テーブルごとの記録と来店の数字が自動で並ぶ環境なら、1分です。件数を数える15分は今週から。突き合わせの1分は、数字の出し方を整えてから。この順番で、半年の道のりを走り切ってください。


悪い接客を無くす取り組みに関する「よくある質問」

Q. スタッフから「嫌だった接客」が出てきません。

A. 記事の中の10個をそのまま使ってください。大事なのは完璧な10か条を作ることではなく、今週、レジ横に貼ることです。貼ってから、毎週の集計で中身を入れ替えていけば、半年後にはあなたのお店だけの10か条になります。

Q. 見張り役をやりたがらないスタッフがいます。

A. 見張り役は「監視係」ではなく「記録係」だと伝えてください。名前を書かない、叱らない、数えるだけ。このルールが守られていれば、見張り役は嫌な役ではなくなります。それでも抵抗があるなら、最初の1週間は店長がやって、ノートの書き方を見せてから交代してください。

Q. 件数を貼り出すと、スタッフが萎縮しませんか。

A. 名前を書かず、件数だけを貼るのがポイントです。「今週は3件」という数字は、誰かを責める数字ではなく、お店の数字です。数字が下がっていくのを全員で見られると、萎縮ではなく手応えに変わります。逆に、名前を書いた瞬間に隠すようになります。

Q. 研修は本当に要らないのですか。

A. 要らないとは言っていません。順番の話です。10か条で減点をゼロにしてから研修を受ければ、研修で磨いた加点が減点に打ち消されなくなります。1人2万円×10名の20万円を、減点がゼロになってから使ってください。

Q. お客様の要求が理不尽なときも、悪い接客になりますか。

A. なりません。「悪い接客を無くす」は「何でも従う」ではありません。10か条とは別に、「ここから先はお断りする」という線引きを1枚作ってください。特にアルコールが入る業態では、この1枚がスタッフを守ります。

Q. 10か条は増やしてもいいですか。

A. 10個のまま、中身を入れ替えてください。件数がゼロになった項目を外し、新しく気づいた項目を入れる。増やすと、読み上げも判定も薄まります。A4を1枚、10か条だけ。この制約が、続く理由です。

Q. スタッフが少ない小さなお店でもできますか。

A. できます。むしろ効きやすい業態です。10か条の材料が少なければ、記事の中の10個から選んでください。見張り役はオーナー自身が最初の1週間をやり、2週目からスタッフに回します。人数の少ないお店では、1人の減点がそのままお店の評価になりますから、「やらないこと」を紙にしておく効果は、大きなお店より大きいのです。

Q. 店長が不在の日は、どうすればいいですか。

A. 見張り役が読み上げも兼ねてください。10か条は紙に貼ってあるので、店長がいなくても営業前の3分は回ります。月曜の集計だけは店長が行い、テーマと直す仕組みを決めて、貼ってある紙に書き込んでおけば、不在の日も全員が同じ方向を向けます。

Q. 効果はいつから出ますか。

A. 悪い接客の件数は、10か条を貼った週から減り始めます。私のお店なら3週間でゼロに近づきます。ただし、お客様の再来店として数字に表れるまでは半年です。件数を毎週の道しるべにして、半年を走り切ってください。

Q. 何から始めればいいですか。

A. 今日の閉店後に、スタッフ1人に「お客様として嫌だった接客」を1つ聞いて、ノートに書いてください。それが、あなたのお店の10か条の1行目です。


まとめ:加点を増やす前に、接客の減点をゼロに

要点を3つにまとめます。

  • お客様の記憶は、加点より減点が長持ちする。悪い接客1回が、月商500万円のお店で年間およそ370万円の売上を静かに消す
  • 悪い接客は才能ではなく、「やらないこと」を決めて守るだけ。かかるお金は0円
  • 記録は名前ではなく件数。直すのは人ではなく仕組み。10か条を作った日から、悪い接客は「個人の性格」ではなく「お店の数字」になる

明日の1歩はこれだけです。閉店後にスタッフ1人に「お客様として嫌だった接客」を1つ聞いて、ノートに書いてください。

最後に、うれしかった話をひとつ。優しい店長ではなかったと書きましたが、そのかいあって、社会人になってから感謝されて飲みに誘われたり、結婚式に呼んでもらったりしました。本当にうれしい限りです。「やらないこと」を決めて守る厳しさは、スタッフの人生にも残ります。

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