「ポーションを見直す」と聞くと、量を減らしてケチる話だと思いますよね。お客様の楽しみを削って、浮いた分を利益にする——そんな話なら、私は書きたくありません。

この記事は逆の話です。私はポーションで、お客様を増やしたことがあります。大盛りにした商品が、それまで普通だったメニューから「お客様を呼ぶメニュー」に変わりました。その一方で、居酒屋をやっていた時代には、ポーションをあえて小さくして、たくさんの商品を注文しやすくしたら、それが逆にお客様へのサービスになった経験もあります。

増やして呼ぶ。小さくして楽しませる。ポーションは「削る話」ではなく「設計の話」です。

私は飲食店の利益改善策を205個すべて書き出し、「年間いくら利益が増えるか」「いくらかかるか」「効果が出るまで何か月か」の3つの基準で、1つずつ100点満点の採点をしました。「ポーションを見直す」は70.5点でA評価、34位タイです。かかるお金はほぼ0円。必要なのはキッチンスケール1台と、設計の考え方だけです。

私は飲食店の店長を10年、経営を25年、コンサルタントを15年やってきました。今は飲食店専用のPOSレジを作る会社を経営しながら、60席の焼肉店を自分で経営しています。この記事の試算はすべて、その実在するお店(月商500万円・原価率34%)の数字で行います。

読み終わる頃には、「ポーション管理はケチな話」という印象が、「明日、看板商品を1回計ってみよう」に変わっているはずです。

目次

採点の内訳:70.5点・A評価・34位タイの中身

まず点数の中身からお見せします。

  • インパクト5点:原価率のブレ退治と、商品ごとのメリハリ設計で、年間250万円クラスの利益効果と採点しました。
  • コスト10点(満点):かかるお金はほぼ0円。キッチンスケールが1台あれば十分です。
  • 時間7点:基準を作って、お店に浸透するまで、およそ2か月です。

205施策はロジックツリーで整理していて、この施策の枝は「利益を増やす→費用を下げる→原価を下げる→商品原価を落とす」の枝先にあります。費用を下げる側の施策としては上位のA評価です。

理由をひとことで言うと、「毎日・全品に効く」からです。新メニューの開発は当たり外れがあります。仕入先の見直しは交渉に時間がかかります。でもポーションは、今日の営業から、すべての商品に、毎日効きます。しかもお金がかからない。地味に見えて、費用側の施策の中では別格の使い勝手なのです。

ポーション管理の一番の敵は「目分量」です

本題に入ります。ポーション管理の一番の敵は、量が多いことでも少ないことでもなく、「目分量」です。

計量しないお店では、同じ商品でも、作る人と日によって量が±10%は平気でブレます。ベテランと新人で違う。忙しい日と暇な日で違う。同じ人でも、その日の忙しさや疲れで違う。悪意はどこにもありません。ただ、基準がグラムで決まっていないだけです。

ブレが生まれる場所は、盛り付けだけではありません。肉や魚のカット、仕込みの小分け、ソースやタレのかけ方。グラムの基準がない工程はすべて、目分量のブレの入り口になります。だからこそ「うちは盛り付けが丁寧だから大丈夫」というお店でも、計ってみると驚くことが多いのです。

このブレが、両方向に損を生みます。多く盛った日は、原価が上がります。少なく盛った日は、原価は下がりますが、お客様をがっかりさせます。「今日はいつもより小さいな」という違和感は、口に出されないまま、再来店の足を静かに止めます。しかも、がっかりさせた日の損は、原価のように数字に出ません。数字に出ない損ほど、気づいたときには大きくなっています。

数字にします。私のお店の原価率は34%です。これが目分量のブレで1.5ポイント上がると、月商500万円で月7.5万円。年間90万円です。

この90万円の一番嫌なところは、誰も幸せになっていないことです。値下げなら、お客様は喜んでいます。大盛りサービスなら、お客様の満足が残ります。でも目分量のブレは、味も評判も満足も何ひとつ積み上げないまま、年間90万円が消えていきます。

だからポーション管理の第一歩は、削ることではありません。基準を決めて、毎回同じにすることです。減らすかどうかの話は、そのずっと後に、限られた範囲でだけ出てきます。

大盛りで呼び、小盛りで楽しませる——実体験を2つ

基準の話の前に、私の実体験を2つお話しさせてください。「ポーションは設計だ」という考えは、この2つの経験から来ています。

ひとつは、大盛り商品を作った話です。

ある商品を思い切って大盛りにしたところ、見た目のインパクトで、それまで普通のメニューだったものが「お客様を呼ぶメニュー」に変わりました。テーブルに運ばれるたびに目を引いて、注文の理由になる。同じ材料、同じ味でも、量の設計ひとつで商品の役割が変わったのです。ポーションは、増やす方向にも武器になります。

もうひとつは、居酒屋時代の学びです。

こちらは逆に、ポーションをあえて小さくしました。ひと皿を小さくして、たくさんの商品を注文しやすくしたのです。すると、これが逆にお客様へのサービスになりました。居酒屋のお客様は、少しずつ色々食べられる方が楽しいのです。ひと皿が大きいと、2品目3品目に手が伸びません。小さくしたことで注文の楽しみが増え、品数が出るようになりました。

この2つの経験は、方向が正反対です。片方は増やして成功し、片方は減らして喜ばれた。もし「ポーションの正解」がひとつなら、どちらかは失敗していたはずです。

増やして正解の商品と、減らして正解の商品が、同じ商売の中にある。この2つの経験から出る結論はひとつです。ポーションの正解は、全品一律には存在しません。商品ごとに役割を決めて、役割に合った量を設計する。それがポーション管理の本当の姿です。

商品の役割は3つ:呼ぶ・楽しませる・支える

商品の役割は3つ:呼ぶ・楽しませる・支える

では、役割とは何か。私は主要な商品を3つに分類しています。

  • 呼ぶ商品:看板や大盛りなど、見た目で選ばれる商品。お客様がお店を選ぶ理由になっている商品です。ここは絶対に削りません。むしろ盛ります。
  • 楽しませる商品:おつまみ・サイド系。小さめのポーションにして、品数を頼みやすくします。ひと皿を小さくしても品数が増えるので、客単価はむしろ上がります。
  • 支える商品:どちらでもない定番。基準グラム通りに安定させて、これまで過剰に盛られていた分だけを適正化します。

大事なことを先に言います。この3分類の中で、削っていいのは3つ目の「過剰だった分」だけです。お客様が価値を感じている量には、手を付けません。

「呼ぶ商品」の量は、お客様がお店に来る理由そのものです。「楽しませる商品」の小ささは、削減ではなくサービスの形です。減らして原価を守るのではなく、役割を決めて、役割からはみ出したブレと過剰だけを直す。ポーション管理で守るのは原価率だけでなく、お客様の体験も一緒なのです。

この3分類には、もうひとつ良いことがあります。スタッフへの説明がしやすくなることです。「原価が苦しいから減らす」という説明は、盛り付ける手を暗くします。「この商品はお客様を呼ぶ係だから絶対に減らさない。この商品は品数を楽しんでもらう係だから小さく」という説明なら、量の意味が伝わります。量に意味があるお店は、盛り付けが安定します。

実践!3ステップのポーション管理

やり方です。道具はキッチンスケール1台。3ステップで進めます。

ステップ1:主要20品の基準グラムを決める(今週末・2時間)

出数上位20品について、いまの「ちょうどいい盛り」を一度計量して、レシピにグラムで書き込みます。肉なら1人前は何グラム、ご飯なら何グラム、という形です。

ここでは減らしません。これが大事なポイントです。ステップ1でやるのは、「正解の量」を数字にすることだけです。いまお客様に喜ばれていて、利益も出ている盛り付け。それをベテランの目分量から、誰でも再現できるグラムに翻訳します。

なぜ20品かというと、出数の多い商品ほど、ブレの影響が大きいからです。1日に何十回も作られる商品の±10%と、たまにしか出ない商品の±10%では、積み上がる金額がまるで違います。まず上位20品。ここを固めるだけで、目分量のブレの大半を捕まえられます。

ステップ2:商品に役割を付けてメリハリを設計する(1時間)

計量した20品を、先ほどの3つに分類します。呼ぶ商品はどれか。楽しませる商品はどれか。残りが支える商品です。

分類に迷ったら、こう考えてください。お客様がこの商品を目当てに来ているなら「呼ぶ」。品数を楽しむ場面で頼まれるなら「楽しませる」。どちらとも言い切れなければ「支える」です。

そのうえで、呼ぶ商品は絶対に削らない、むしろ盛る。楽しませる商品は小さめにして品数を頼みやすくする。支える商品は基準グラム通りに安定させ、過剰に盛られていた分だけ適正化する。紙に書けば1時間で終わりますが、この1時間が、あなたのお店のポーション戦略のすべてになります。

ステップ3:計量を仕組みにする(毎日)

盛り付け場にスケールを置いて、新人は毎回、ベテランは1日の最初の1皿だけ計る運用にします。

ベテランに毎回計らせる必要はありません。長年の目分量の腕は、それ自体が財産です。ただ、どんな腕でも少しずつズレます。だから1日の最初の1皿だけ計って、その日の目分量を基準グラムに合わせ直す。腕を否定する仕組みではなく、腕のズレを毎日リセットする仕組みです。この言い方でスタッフに伝えると、ベテランほど納得してくれます。

そして月に1回、原価率と突き合わせて、効果を確認してください。基準グラムが守られていれば、原価率のブレは目に見えて収まってきます。

浸透までの2か月ロードマップ

採点で時間7点=「およそ2か月」とした道のりを、目安として並べておきます。

  • 今週末:ステップ1。出数上位20品を計量して、基準グラムをレシピに書く(2時間)
  • 翌週:ステップ2。20品を呼ぶ・楽しませる・支えるに分類して、削っていい範囲を決める(1時間)
  • その日から毎日:ステップ3。新人は毎回、ベテランは最初の1皿だけ計量
  • 1か月後:原価率と突き合わせる1回目の効果確認。守られていない基準がないかも一緒に見る
  • 2か月後:計量が「言われなくてもやる習慣」になり、原価率のブレが収まってくる

最初の2週間は、基準グラムより多かったり少なかったりする発見が続きます。それで正常です。ズレの発見こそが、この仕組みの仕事だからです。ズレを責める材料にせず、「見つかって良かった」で回してください。責められると分かった瞬間、スタッフはスケールに乗せなくなります。

続けるためのコツは「スケールの置き場所」です

3ステップの中で、一番つまずきやすいのはステップ3です。基準グラムを決めた週は全員が計るのに、1か月後には誰も計っていない。よくある光景です。

原因のほとんどは、気持ちではなく物理です。スケールが盛り付け場から3歩離れた棚にしまわれている。それだけで、忙しい営業中の計量は消えます。歩かず、しゃがまず、手を伸ばせば届く位置に置きっぱなしにする。計量が続くかどうかは、意志の強さではなく、スケールと盛り付け場の距離で決まります。

基準グラムの掲示も同じ理屈です。レシピのファイルを開かないと基準が分からない状態では、確認されなくなります。ポーション設計シートを盛り付け場の見える位置に貼って、「計る道具」と「正解の数字」を同じ場所にそろえてください。仕組みで続けるとは、頑張らなくても続く形に置き方から変えることです。

もうひとつのコツは、ルールを絞ることです。「全員が毎回計る」は理想に見えて、続きません。新人は毎回、ベテランは最初の1皿だけ。この非対称なルールは、続けることを最優先に設計した結果です。完璧な計量が3週間で止まるより、緩い計量が毎日続く方が、原価率はよほど安定します。

基準グラムの副産物:新人教育が速くなります

基準グラムには、原価以外の副産物があります。新人教育です。

目分量のお店で新人が盛り付けを覚える方法は、「先輩の手元を見て、なんとなく合わせる」でした。正解が先輩の頭の中にしかないので、覚えるまで時間がかかり、その間のポーションはブレ続けます。

基準グラムがあると、新人には「正解の数字」と「答え合わせの道具」が最初から渡されます。毎回計ること自体が練習になり、「だいたいこのくらい」が体に入るまでの期間が短くなります。教える側も、「もうちょっと多く」というあいまいな指導から、「基準は何グラム」という一言で済むようになります。

レシピにグラムが書いてあるお店と、書いていないお店。数年後のスタッフの育ち方に、静かに差がつくところです。

ケチなお店に見られる2つの罠

ケチなお店に見られる2つの罠

ここまでが設計の話です。逆に、順番を飛ばして「原価が苦しいから量を減らす」から入ると、2つの罠にはまります。

罠1:全品一律カット

原価が苦しくなると、全品を少しずつ減らしたくなります。5%ずつなら気づかれない、という理屈です。これが一番危ない。

お客様は、メニュー表の数字は覚えていなくても、看板商品の量は体で覚えています。「このお店、小さくなった」という一言の口コミは、削った原価の何倍も高くつきます。しかも一律カットは、絶対に削ってはいけない「呼ぶ商品」まで削ってしまいます。お客様がお店に来る理由そのものを、自分の手で小さくしてしまうのです。

削るのは、役割設計で決めた「支える商品の過剰分」だけ。この線を越えないことが、ポーション管理と「ケチ」の分かれ目です。

罠2:値上げから逃げる手段にする

量を減らして値段を据え置く、いわゆるステルス値上げです。これは、ばれたときの信用の失い方が、正面からの値上げの比ではありません。値上げなら「材料が上がったので」と説明できますが、こっそり減らした量には、説明の機会すらありません。気づいたお客様の中で、静かに信用だけが減っていきます。

原価がどうしても合わない商品は、堂々と値上げして、価値で説明してください。ポーション管理と値上げは、別の道具です。値上げのやり方は、教科書シリーズ#01で詳しくお話ししています。

業態別の読み替えガイド

3ステップの骨格はどの業態でも同じですが、力の入れどころが業態で変わります。ご自身のお店に近いところから読んでください。

焼肉店・肉業態

グラム基準が命です。肉は原価が高く、1人前の数グラムのブレがそのまま原価率に出ます。ステップ1の計量だけで、原価が目に見えて安定します。私のお店も焼肉店なので、ここは身をもって知っています。

居酒屋

私の実体験どおり、「小さく・品数多く」が客単価と満足の両方に効く業態です。楽しませる商品の設計が主戦場になります。おつまみを小さめにして品数を頼みやすくする設計は、削減ではなく、色々食べたいお客様へのサービスとして機能します。ひと皿が重いお店では、お客様は注文を途中でやめます。ひと皿が軽いお店では、「あと1品」が自然に出ます。この差は、メニューの値段を1円も変えずに生まれます。

定食・ラーメン業態

ご飯と麺の量は、お客様の満足の生命線です。主食は削らないでください。設計するのは、原価の高い具材の側です。トッピングや具材の量を基準化して、主食の満足は守り切る。この線引きが業態の鉄則です。

基準グラムは、他の原価施策の土台にもなります

主要20品の基準グラムが決まると、実はポーション以外の仕事も変わり始めます。

まず、仕込み量と発注量が読めるようになります。1人前が何グラムか決まっていれば、「明日この商品が何食出そうだから、材料はこれだけ要る」という計算が成り立ちます。目分量のお店では、この計算の土台がないので、発注も「いつもの量」という別の目分量になりがちです。

次に、メニュー改定や値上げのときの原価計算が正確になります。1人前のグラムが決まっていない商品の原価は、実は誰も正確に知りません。値付けの判断は原価の把握から始まるので、基準グラムは値決めの精度そのものを支えます。

205施策には原価にかかわる施策が他にもたくさんありますが、そのほとんどは「1人前の量が決まっていること」を前提にしています。ポーション管理が費用側の上位に入った背景には、この土台としての価値もあります。

ポーションを直したのに、原価率が動かないとき

3ステップを回し始めて、月1回の効果確認をすると、こういうことが起きる場合があります。「基準グラムを守っているのに、原価率が下がらない」。

このとき、原因はポーション以外にあります。考えられるのは3つです。仕入価格が上がっている。仕込みや保管でロスが出ている。レジの登録ミスで、売れた商品と記録がずれている。

どれが犯人かを突き止めるには、商品別の数字が必要です。商品別の出数と原価率が自動で見られる環境なら、この切り分けは1分で終わります。手集計のお店だと、棚卸しのたびに数時間の仕事になります。

ポーション管理そのものはスケール1台で始められます。ただ、効果確認まで含めて回し続けるなら、数字がラクに見える環境を一度見直しておくことをおすすめします。切り分けが1分になると、この施策だけでなく、原価にかかわる施策すべての回転が速くなります。

「ポーション設計シート」の中身と使い方

この記事の3ステップをそのまま書き込めるように、「ポーション設計シート」を用意しました。中身は3つです。

  • 主要20品の基準グラム記入欄:ステップ1で計った「正解の量」を商品ごとに書き込む欄です。レシピに転記する前の下書きとしても使えます。
  • 3分類の設計表:20品それぞれに「呼ぶ・楽しませる・支える」の役割を付けて、削っていい範囲と削らない範囲をひと目で見えるようにする表です。
  • 毎日の計量運用ルール:新人は毎回、ベテランは1日の最初の1皿、月1回の原価率チェックという運用を、そのまま貼り出せる形にしてあります。

週末の2時間は、白紙から考えると長く感じますが、埋める欄が決まっていれば作業になります。シートは記事の最後にご案内する公式LINEから無料で受け取れます。

よくある質問(FAQ)

Q. 量を基準化したら、お客様に気づかれませんか。
A. 基準化で変わるのは「過剰に盛られていた分」と「少なすぎた日」だけです。基準はいまの「ちょうどいい盛り」から決めるので、お客様の体験は「日によって違う」から「いつ来ても同じ」に変わります。気づかれるとしたら、良い方向です。

Q. 毎回計っていたら、提供が遅くなりませんか。
A. 毎回計るのは新人だけです。ベテランは1日の最初の1皿だけ。新人にとっての計量は、遅くなる原因ではなく、最短で盛り付けを覚える教材になります。グラムという正解があれば、体で覚えるまでの期間はむしろ短くなります。

Q. 基準グラムは、どうやって決めればいいですか。
A. いまの「ちょうどいい盛り」を一度計量するだけです。理想論や他店の真似から決めないでください。いま、あなたのお店でお客様に喜ばれている量が正解です。減らすかどうかの判断は、ステップ2の役割分類の後、支える商品の過剰分に限って行います。

Q. 主要20品以外の商品は、どうしますか。
A. 後回しでかまいません。出数の多い商品ほどブレの影響が大きいので、まず上位20品を固めることが先です。20品が安定して、計量が習慣になってから、必要に応じて広げてください。最初から全品を狙うと、ステップ1が終わりません。

Q. 大盛りの「呼ぶ商品」は、原価が上がりませんか。
A. その商品単品の原価率は上がります。それでいいのです。呼ぶ商品の役割は、利益ではなく集客です。お客様を連れてくる仕事を任せた商品と、利益を支える商品を、同じ物差しで測らないこと。それが役割設計の考え方です。全体の原価率は、支える商品の安定とブレ退治で守ります。

Q. 定食屋です。ご飯の量を基準化して減らしてもいいですか。
A. 基準化はしてください。減らすのはおすすめしません。定食・ラーメン業態では、主食の量がお客様の満足の生命線だからです。基準グラムで「日によるブレ」をなくすところまでが主食の仕事で、原価の設計は具材やトッピングの側で行ってください。主食を削って原価を守ると、満足ごと削れます。

Q. ベテランのスタッフが計量を嫌がりそうです。
A. 伝え方がすべてです。「あなたの目分量が信用できないから計れ」ではなく、「どんな腕でも毎日少しずつズレるから、最初の1皿で合わせ直してほしい」と伝えてください。毎回ではなく1日1皿だけ、という設計自体が、腕への敬意の表れです。そして計った結果がズレていても責めないこと。責めた瞬間に、この仕組みは止まります。

Q. 効果はいつごろ数字に出ますか。
A. 採点では、基準を作って浸透するまでおよそ2か月と見ています。月1回、原価率と突き合わせる確認だけは必ず続けてください。動かない場合は、この記事の「原価率が動かないとき」の切り分けに進んでください。

まとめ:ポーションは、お客様を喜ばせる設計の話

要点を3つにまとめます。

  • まず基準グラム:目分量のブレ退治だけで、月商500万円のお店で年間90万円のメリット
  • 商品に役割を:呼ぶ・楽しませる・支えるの3分類で、削らない場所を先に決める
  • 削っていいのは「過剰だった分」だけ:看板には触らない。値上げの代わりにしない

明日の1歩はこれだけです。看板商品を1回だけ、スケールで計ってみてください。基準より多いのか、少ないのか、そもそも基準がなかったのか。数字がひとつ手に入った瞬間から、あなたのお店のポーションは、目分量から設計に変わり始めます。205施策の中で、明日の1歩がこれほど軽い施策はなかなかありません。

この内容は、YouTube「飲食店経営ワンゼミ」教科書シリーズ#09で動画でも解説しています。主要20品の基準グラム記入欄と、3分類の設計表、毎日の計量運用ルールをまとめた「ポーション設計シート」を公式LINEで無料配布していますので、週末の計量のお供にお使いください。

大盛りで呼んで、小盛りで楽しませて、基準で守る。私も自分のお店で回し続けています。一緒にやりましょう。

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