「飲み放題を置くと、飲まれて損をするんじゃないですか」。

これから忘年会の予約が入り始める時期に、いちばんよく聞かれる質問です。

答えは逆です。 お客様が実際に何杯飲んでいるかを数えると、飲み放題にしていただくほうが、利益は増えます。

私が店長をしていたお店では、飲み放題にしても、1人あたりの平均の杯数は3杯まで届きませんでした。 通常より500円高い飲み放題が大当たりしたこともあります。

飲食店の利益改善策を205個すべて書き出して採点したところ、「コース、飲み放題を導入する」は84点のS評価で、上位に入りました。かかるお金は、ほぼ0円です。

この記事では、なぜ飲み放題で利益が増えるのか、先月の伝票でできる3ステップ、そしてやりがちな2つの罠までを、現役で飲食店を経営する立場からお伝えします。今週作れば、12月に間に合います。

目次

1. 採点の内訳——お金をかけずに、宴会の売上をまとめて増やせます

まず点数の中身からお見せします。

  • インパクト8点:宴会の売上が人数分まとまって増え、飲み物の利益も1人あたりで上がる
  • コスト10点:かかるお金はほぼ0円。メニューに1枚足して、予約の電話で案内するだけ。満点
  • 時間6点:宴会の予約は1〜2か月前に入るので、ある程度の数がそろうまで4か月を見る

注目していただきたいのは、コストが満点だということです。客単価を上げようとすると、原価のいい食材を入れる、メニューを作り直す、という話になりがちです。この施策は、いま出している料理と飲み物の組み方を変えるだけです。

枝でいうと「利益を増やす → 売上を上げる → 客単価を上げる → 商品価格を上げる」。同じ枝には、セット販売や大盛り・濃いめ、値上げが並びます。

2. 飲み放題は、なぜ利益が増えるのか

2-1. 私が店長をしていたお店の話

私がアッパー居酒屋の店長をしていたときのことです。ちょうど、地酒が流行り始めた頃でした。

あるお客様から、「地酒を飲み放題にしたい」と言われたんです。そこで、地酒なども含めた「プレミアム飲み放題」を作りました。

これが、大当たりしました。

お店は東京駅にあって、サラリーマンのお客様が多いお店です。普段は飲み放題をしないような年齢層のお客様にまで、飲み放題が広まりました。

料金は、通常の飲み放題が1,500円、プレミアムが2,000円です。

2-2. 数えてみると、話は逆になります

飲み放題にしないお客様は、飲み物が平均1.5〜2杯。宴会の料理にプラスして、飲み物の売上は1,000円ちょっとにしかなりません。

ところが、飲み放題にしても、平均の杯数は3杯までいかないんです。

だから、飲み放題にしていただくほうが、圧倒的に利益が上がります。

しかも地酒は、一升2,000〜3,000円くらいで仕入れていました。注文が地酒に偏っても、飲み放題の原価にはほとんど影響しません。プレミアムで上がった500円が、まるまる利益になったような計算です。 単価が高かったので、かなりの収益になりました。

2-3. 私の焼肉店の数字に置き換えます

ここからの前提は、仮の数字です。

前提 値
ドリンク1杯 600円(原価150円)
単品で頼むグループ 1人1.75杯(飲み物 約1,100円)
飲み放題のグループ 1人2.8杯(3杯までいかない)
コースにすると料理が 1人550円上がる
料理の原価率 34.0%

飲み放題で増える原価は、1人1杯分ほど、約160円だけです。

料理は、コースにすると単品で頼むときより1人550円上がります。コースには、単品ではあまり頼まれない前菜や〆まで入るからです。

売上から原価を引いた粗利で比べると、こうなります。

プラン 単品のグループと比べた1人あたりの粗利の増え方
通常の飲み放題1,500円のプラン 約660円
プレミアム飲み放題2,000円のプラン 約1,200円

人件費は、コースで料理の流れが決まり、同じ人数で回せるので、ここでは増やしていません。

500円の差が、そのまま粗利の差になっていることが分かります。

2-4. 計算の過程を開いておきます

「約660円」「約1,200円」がどこから出た数字なのか、途中まで見せておきます。ご自身のお店の数字に置き換えるときの型にしてください。

単品で頼むグループ(1人あたり)

  • 飲み物の売上:600円 × 1.75杯 = 1,050円
  • 飲み物の原価:150円 × 1.75杯 = 約260円
  • 飲み物の粗利:約790円

通常の飲み放題1,500円のプラン(1人あたり)

  • 飲み物の売上:1,500円
  • 飲み物の原価:150円 × 2.8杯 = 420円
  • 飲み物の粗利:1,080円(単品より 約290円 増)
  • 料理の増え分:550円 × (1−34.0%)= 約360円
  • 合わせて 約660円の増

プレミアム飲み放題2,000円のプラン(1人あたり)

  • 飲み物の売上:2,000円
  • 飲み物の原価:約420円(地酒を入れても1杯の原価が変わらないため)
  • 飲み物の粗利:約1,580円(単品より 約790円 増)
  • 料理の増え分:約360円
  • 合わせて 約1,200円の増

500円を上げても原価が変わらない。 ここが、この施策のいちばんの芯です。

2-5. 何杯飲まれたら、損に変わるのか

「たくさん飲まれたら」が心配な方のために、杯数ごとの粗利を出しておきます。通常の飲み放題1,500円の場合です。

1人あたりの杯数 飲み物の原価 飲み物の粗利 単品のグループ(約790円)との差
2.0杯 300円 1,200円 +410円
2.8杯(前提) 420円 1,080円 +290円
4.0杯 600円 900円 +110円
5.0杯 750円 750円 −40円
6.0杯 900円 600円 −190円

1人5杯を超えて、はじめて単品のグループを下回ります。 私が数えた限り、4人以上のテーブルで平均5杯に届くことはまずありませんでした。これが「飲まれて損」が思い込みだと言える理由です。

ただし、罠1の団体だけは別です。 後ほどお伝えします。

3. 宴会プランを作る3ステップ

道具は、先月の伝票、仕入れの請求書、電卓。これだけです。

ステップ1:先月の伝票で、1人あたりの杯数を数える

今週の営業後に、店長が先月の伝票から、4人以上のテーブルを20卓分抜き出します。

飲み物の杯数を人数で割って、1人あたりの杯数と金額を出してください。

1.5〜2杯、1,000円ちょっとに収まっていれば、飲み放題にしたほうが利益は増えます。

あわせて、仕入れの請求書から、生ビール、サワー、ハイボール、ソフトドリンクの1杯の原価を書き出します。ここが、次のステップの土台になります。

ステップ2:飲み放題を2段にする

  • 通常の段:生ビール、サワー、ハイボール、ソフトドリンク
  • プレミアムの段:そこに「お客様が飲みたいと言ったお酒」を足す

常連さんや幹事さんから「これも入れてほしい」と言われたお酒が、いちばんの候補です。

選ぶときの決まりは1つ。グラス1杯の原価が、通常の段のお酒とほとんど変わらないものにします。

一升2,500円の地酒なら、100mlのグラス1杯で約140円。生ビール1杯の原価150円(仮)とほぼ同じです。

一升2,500円 ÷ 1,800ml × 100ml = 約140円

料金の差は500円にします。原価がほとんど変わらないので、この500円が粗利にそのまま乗ります。

ステップ3:コースと組み合わせて、予約の電話で決めていただく

料理長が、コースの料理を組みます。 単品でよく出る売れ筋に、前菜と〆を足します。ピークに時間のかかる料理は入れません。

私の焼肉店なら、料理は1人5,500円ほどになります。

メニューの1ページ目に「ご宴会プラン」を1枚足して、お会計のときに、幹事さんに案内のカードを手渡します。

予約の電話では、2つを並べて案内します。

「お料理のコースに飲み放題が付いて、お1人様7,000円。地酒なども入るプレミアム飲み放題なら、7,500円です」

予約台帳には、人数、コース、飲み放題の段を書きます。この時点で、その日の売上がほぼ決まります。

前日の営業後に、料理長が台帳を見て仕込みの量を決めます。人数分だけ仕込めるので、食材を余らせる心配が減ります。

予約の電話で使う言い方(そのまま使えます)

ステップ3でいちばん大事なのは、2つを並べて言うことです。片方だけ案内すると、選ぶ場面がなくなります。

「ご宴会ですね。お料理のコースに飲み放題が付いて、お1人様7,000円です。地酒なども入るプレミアム飲み放題でしたら、7,500円になります。どちらになさいますか」

ポイントは3つです。

  1. 安いほうを先に言う。 高いほうを先に言うと、値段の話が先に立ちます
  2. 差額ではなく、両方の総額を言う。 「+500円」ではなく「7,000円と7,500円」です
  3. 最後に「どちらになさいますか」で止める。 幹事さんが選ぶ場面を作ります

この一言で、1人あたり約540円の粗利の差が生まれます。20人の宴会なら、1件で約1万1千円です。

案内カードに書くこと

お会計のときに幹事さんへ手渡すカードには、次の4つだけを書きます。

  • プラン名と料金(2段を並べて)
  • コースの料理の中身(前菜から〆まで)
  • プレミアムに入るお酒の名前(これがいちばん見られます)
  • 予約の電話番号と、何日前までに人数を知らせてほしいか

紙1枚です。デザインに時間をかける必要はありません。

お客様の一言が、2段目の始まりです

プレミアム飲み放題は、お客様の一言から生まれました。「地酒を飲み放題にしたい」という声です。

お客様が飲みたいお酒には、売れる理由が入っています。 その声をメモしておくことが、2段目の飲み放題の始まりです。

時間の目安

先月の伝票から4人以上のテーブルを抜き出して、杯数を数えると、2時間ほどかかります。人数と注文が自動で記録される環境なら、5分です。まずは伝票と電卓から始めましょう。

4. やりがちな2つの罠

罠1:1つの料金で、どんな団体も同じように受ける

飲み放題は、4人以上になると、飲む人も飲まない人もいるので、一定の利益が出るのが普通です。

ただし、全員がずっと原価の高いお酒を飲み続ける団体だと、計算が合わなくなります。

以前の動画でもお話ししましたが、学生街のお店で、体育会系の団体さんが原価の高いビールばかり飲み、コストが合わなかったことがあります。コストに合わない一部のお客様には、別料金を提示するなどの施策が必要だったと思います。

避け方はこうです。 予約の電話で、人数と、どんな集まりかを伺います。 そのうえで、飲む量が多くなりそうな団体向けの料金を、先に決めておきます。 決まりが先にあれば、電話の場で迷いません。

罠2:飲み放題を、単品の飲み物より安くする

「飲み放題980円」のように安くすると、お得に見えて予約は入ります。

でも、計算するとこうなります。

1人あたりの粗利
単品のグループの飲み物 約790円
飲み放題980円(2.8杯・原価420円) 560円

1人約230円、利益が減ります。

料金は、飲み放題の粗利が、単品の飲み物の粗利を上回る線で決めてください。 今日の前提なら、下限は約1,200円です(原価420円+約790円)。ここを下回ると、飲み放題が利益を削る商品に変わります。

飲み放題は、安さでお客様を呼ぶ商品ではありません。選ぶ楽しさで、単価を上げる商品です。

5. 業態別の補正

居酒屋

宴会の割合が高い業態です。飲み物の売上の割合も高いので、プレミアムの1段がいちばん効きます。

学生街のように、たくさん飲むお客様が多い地域では、罠1の団体向けの料金を先に決めてください。

ラーメン店・カフェ

宴会が少ないので、この施策の優先度は下がります。 単品にもう1品を付けていただく工夫が先です。

焼肉店

お肉はお客様に焼いていただくので、コースにしても厨房の手間はそれほど増えません。 前菜と〆を入れるだけで、コースの形になります。

和食・レストラン(提供に手間がかかる業態)

コースにすると、ピークの厨房の流れが読めるようになるのが最大の利点です。ただし、手の込んだ料理をコースに入れると提供が遅れます。ステップ3の「ピークに時間のかかる料理は入れない」を厳守してください。

6. 忘年会に間に合わせるスケジュール

時期 やること
今週 先月の伝票で1人あたりの杯数を数える/1杯の原価を書き出す
来週 飲み放題を2段にする(料金差500円)/コースを組む
11月上旬 メニューに「ご宴会プラン」を1枚足す/案内カードを作る
11月中 予約の電話で2つを並べて案内する
12月 台帳を見て人数分だけ仕込む

宴会の予約は1〜2か月前に入ります。今週作れば、12月に間に合います。

7. よくある質問

Q. いまの飲み放題を値上げするのは、お客様が離れませんか。

A. 値上げではなく「上の段を足す」形にしてください。通常の段はそのまま残し、選べる形にします。お客様は選ぶ楽しさを得て、お店は粗利が増えます。

Q. 2段にすると、オペレーションが複雑になりませんか。

A. 予約台帳に「段」を書くだけです。当日は、通常かプレミアムかを卓ごとに伝えるだけで回ります。

Q. プレミアムに入れるお酒が思いつきません。

A. 考えるのではなく、聞いてください。 常連さんや幹事さんに「飲み放題に入っていたら嬉しいお酒はありますか」と聞くだけです。その声が、いちばんの候補です。

Q. 小さなお店で、宴会が月に数件しかありません。

A. それでも作る価値はあります。1件あたりの粗利が1人1,200円増えれば、10人の宴会で1万2千円です。月に数件でも、積み上がります。

Q. 何から始めればいいですか。

A. 先月の伝票から、4人以上のテーブルを10卓だけ抜き出してください。 1人あたり何杯飲んでいたかを数えるところからです。

8. プレミアムの段に入れるお酒の選び方

「どのお酒を入れればいいのか」が、いちばん迷うところだと思います。判断の基準はひとつだけです。グラス1杯の原価が、通常の段のお酒とほとんど変わらないこと。

計算のしかたは簡単です。

1杯の原価 = 仕入れ値 ÷ 容量(ml)× 1杯の量(ml)

よく使う型を並べておきます。数字は仮のものなので、ご自身の請求書に置き換えてください。

お酒 仕入れ値(仮) 1杯の量 1杯の原価 判定
生ビール — 中ジョッキ 150円 通常の段の基準
地酒(一升2,500円) 2,500円/1,800ml 100ml 約140円 ◯ 入れられる
地酒(一升4,000円) 4,000円/1,800ml 100ml 約220円 △ 量を80mlに
焼酎(1.8L 2,000円) 2,000円/1,800ml 40ml+割材 約70円 ◯ 入れられる
ワイン(1本1,200円) 1,200円/750ml 120ml 約190円 ◯ 入れられる
ウイスキー(700ml 3,000円) 3,000円/700ml 30ml+割材 約150円 ◯ 入れられる

ここで大事なのは「高いお酒を入れない」ことではありません。 グラスの量を調整すれば、たいていのお酒は1杯の原価をそろえられます。一升4,000円の地酒でも、1杯を80mlにすれば約180円。生ビールとの差は30円です。

選ぶ順番は、①お客様から名前が出たお酒 → ②1杯の原価が合うか確認 → ③合わなければ量を調整、です。 逆にしてはいけません。原価から先に決めると、誰も飲みたがらないお酒がそろいます。

入れないほうがいいもの

  • 1杯の原価が通常の段の2倍を超えるもの(量を減らしても見栄えが悪くなるため)
  • 仕込みに手間のかかるカクテル(ピークに提供が遅れます)
  • 在庫が切れやすい限定品(「今日はありません」が一番がっかりされます)

まとめ:飲み放題は、選ぶ楽しさで単価を上げる商品です

要点を3つにまとめます。

  • 飲み放題にしても、平均の杯数は3杯までいかない。 単品で頼むグループより、粗利は増える
  • 飲み放題は2段にして、上の段は原価の変わらないお酒で作る。 上げた500円が、ほぼそのまま利益になる
  • コースと組み合わせて、予約の電話で決めていただく。 その時点で、その日の売上がほぼ決まる

明日の1歩はこれだけです。先月の伝票から、4人以上のテーブルを10卓だけ抜き出してください。 1人あたり何杯飲んでいたかを数えてみてください。その数字が、飲み放題の料金を決める土台になります。

忘年会の予約は、これから入ってきます。今週プランを作れば、12月に間に合います。

最後に、忘年会の思い出をひとつ。大卒2年目で、店長をしていたときのことです。よく来ていただいて、仲良くさせてもらっていた幹事さんがいました。その流れで、宴会も忘年会も、うちのお店でやっていただきました。その忘年会のクイズで、「店長の年齢は何歳でしょう」という問題が出たんです。当時は、居酒屋の店長を若い人間がやる時代ではありませんでした。幹事さんは、私をご自分と同じ40歳くらいだと思っていたようです。「じゃあ店長どうぞ」と言われて、本当の20代前半の年を言いました。驚かれて、ちょっと関係がギクシャクしてしまいました。

この内容は、YouTube「飲食店経営ワンゼミ」教科書シリーズ#16でも解説しています。杯数の数え方と、2段の飲み放題の料金表、コースの組み方をそのまま使える「宴会プランの利益計算シート」を公式LINEで無料配布していますので、今週の営業前ミーティングにそのままお使いください。

伝票の杯数を数えるところから、一緒にやりましょう。

▼ 動画で解説を見たい方はこちら

YouTube「飲食店経営ワンゼミ」公式チャンネル

YouTubeチャンネルを見る ▶

\ 今週の営業前ミーティングにそのまま使える! /

宴会プランの利益計算シート

公式LINEにて無料で受け取れます

宴会プランの利益計算シートを受け取る ▶