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利益改善205施策の第11位は、「お客様が勝手に広めてくださる10秒」でした
広告にお金をかけても、なかなか人は来ない。グルメサイトの掲載料を上げても、増えるのは一時だけ。それなのに、隣の通りのお店には行列ができている。そんなふうに感じたことはありませんか。
飲食店の利益改善策を205個すべて書き出して採点したところ、11位タイに入ったのが「動画に撮りたくなるテーブルサービスをする」でした。82.5点のS評価です。
私は利益改善策の一つひとつを、「年間いくら利益が増えるか」「いくらかかるか」「効果が出るまで何か月か」の3つの基準で、100点満点の採点をしました。205個の中の11位ですから、上から数えてすぐのところにあります。それでいて、かかる現金はほとんどありません。使うのは、お店にもうある料理と道具だけです。
申し遅れました。私は飲食店の店長を10年、経営を25年、コンサルタントを15年やってきました。今は飲食店専用のPOSレジを作る会社を経営しながら、60席の焼肉店を自分で経営しています。この記事の試算はすべて、その実在するお店(月商500万円・客単価6,000円・原価率34%・スタッフ10名)の数字で行います。
先にお断りしておきます。この記事に出てくる「この10秒がきっかけで来てくださる組が週に12組」「10組のうち3組がスマホを向けてくださる」は、私のお店で測った実績ではなく、仮定または目安です。その仮定を置いたうえで、売上や利益のお金の部分を、私のお店の数字で試算していきます。
もうひとつ、この記事が扱う範囲をはっきりさせておきます。この記事は「提供の仕方」の記事です。盛り付けや器、料理の名前といった、商品そのものの作り方は扱いません。投稿する時間帯やハッシュタグの付け方といった、お店のアカウントの運用の話も扱いません。扱うのは、料理がテーブルに届いたあとの10秒を、ホールでどう作るかだけです。
この記事では、なぜ写真ではなく動画なのか、撮りたくなる動きの3つの条件、営業前の15分でできる型の作り方、そして多くのお店がはまる2つの罠までお伝えします。読み終わる頃には、今週どのひと手間をお席に移すかが決まっているはずです。
採点の内訳は、この施策の正直な姿です
まず点数の中身からお見せします。
- インパクト8点:後ほどお見せする試算で、利益で年間およそ400万円。年400万円クラスの効果
- コスト10点:現金の支出はほぼ0円。かかるのは練習の時間だけで、満点
- 時間5点:動画が投稿され、それを見た方が来店されるまで半年かかるため、辛めに採点
注目してほしいのはコストの10点です。205個の中で、満点が付く施策はそう多くありません。お客様に喜んでいただく仕掛けというと、新しいメニューを作る、器を買い替える、機械を入れる、といった話になりがちです。けれどもこの施策で使うのは、いま出している料理と、いま厨房にある道具だけ。増えるのは、営業前の15分の練習だけです。
一方で、時間の5点は正直に受け取ってください。お客様がスマホを向けてくださるかどうかは、来週からでも数えられます。けれども、その動画が人に届き、それを見た方が実際に来店されるまでには時間がかかります。売上や利益の数字としてはっきり表れるまで、半年を見ておいてください。
客数の施策なのに、正体は「顧客満足」の施策です
この施策がある「場所」にも注目してください。
利益改善のロジックツリーで言うと、「利益を増やす→売上を上げる→客数を増やす→リピート客を増やす→顧客満足を上げる」の枝にあります。広告を打つ枝ではなく、来てくださった方の満足から始まる枝です。
満足していただいた方がスマホを向け、その動画が次のお客様を連れてくる。だから新しいお客様が増えるのに、広告費はかかりません。新しいお客様を1人集めるのに、グルメサイトや広告では3,000円から5,000円かかりますが、この施策で増えるお客様は、その広告をお客様が無料で出してくださった結果です。
写真は「料理」を映す。動画は「時間」を映す
では本題です。お客様がスマホを取り出す瞬間を、思い出してみてください。
料理がテーブルに置かれたときに、写真を1枚撮る。ここまでは、どのお店でも起きています。
でも、写真に映るのは止まった料理だけです。
動画は違います。動画には、料理だけでなく、お店の空気が映ります。スタッフの声、テーブルの笑い声、盛り上がり。
それを見た方は、「ここに行けば、この時間が手に入る」と分かります。だから写真よりも、来る理由がはっきり伝わるんです。
ここが、この施策が11位に入った理由です。
動画を撮りたくなるのは、目の前で何かが動くとき
では、どうすれば動画になるのか。答えははっきりしています。動画を撮りたくなるのは、目の前で何かが動くときです。
タレをかけると、音がして湯気が上がる。
スープを注ぐと、器の中の色が変わる。
大きなお肉を、その場で切り分ける。
厨房でやれば、誰の目にも触れない作業です。それがテーブルの上では「体験」に変わります。
動画は、撮ってくださった方の次の来店も近づけます
もうひとつ、見落とされやすい効き方があります。動画は、撮った本人にも効くということです。
帰り道や家で、撮った動画をもう一度見返す。そのたびに、お店で過ごした時間を思い出します。友達に見せながら「ここ、また行こう」と話が出る。
つまりこの10秒は、新しいお客様を連れてくるだけではありません。撮ってくださった方の次の来店も近づけてくれます。後ほどの試算で「週に12組」と置いているのは、動画を見て初めて来てくださる方と、楽しかったからまた来てくださる方を合わせた数です。
前回の「写真に撮られる1品」との違い
ここで、前回お話しした「写真に撮ってSNSにあげたくなる商品」との違いを整理しておきます。混ざりやすいところなので、先に線を引いておきます。
前回は、お皿そのものを作る話でした。大きさ、名前、器。止まった1皿が、写真に撮られる形になっているかどうかの話です。
今日は、お皿が届いたあとの、スタッフの動きの話です。
盛り付けや器、料理の名前は、いまのままで構いません。この記事では一切触りません。変えるのは、最後のひと手間をどこでやるか、それだけです。
前回の話を読んでいなくても、この記事だけで進められます。逆に、前回の1品がすでにできているお店なら、その1品をお席で仕上げる形にできないかを考えてみてください。写真に撮られる1皿が、動画にも撮られる1皿になります。
「サービスの悪い接客を無くす」との違い
もうひとつ、同じ11位タイに「サービスの悪い接客を無くす」という施策があります。点数もまったく同じ82.5点です。
あちらは、減点をゼロにする話でした。やってはいけないことを決めて、全員でやらないようにする。守りの仕事です。
今日は、その次の段階です。加点を作る話です。
お客様がスマホを向けてくださる瞬間は、スタッフにとっても特別です。自分の動きを、お客様が楽しんでくださっている。それが目の前で分かるからです。悪い接客をゼロにするのは、守りの仕事。撮りたくなる10秒は、スタッフが自分から攻められる仕事です。
撮りたくなる動きは「10秒」で終わる
撮りたくなる動きには、長さの目安があります。10秒です。
お客様がスマホを構えて、撮り終えるまでが、ちょうどこのくらいです。それより長くなるほど、構えた手が下がっていきます。長い動画は、撮っている側も疲れるのです。
そして10秒なら、スタッフも忙しい夜に続けられます。この「続けられる」が、実は一番大事なところです。あとで罠1としてお話ししますが、続かない演出は、やらないほうがましな結果になることすらあります。
週に12組増えるだけで、年およそ400万円の試算
数字にします。私のお店は月におよそ830人(月商500万円÷客単価6,000円)、3人組で数えると280組です。
仮に、この10秒がきっかけで来てくださる組が、週に12組増えたとします。1日にすると2組弱です。年にすると624組。
3人組なら1組1万8,000円ですから、年およそ1,100万円の売上になります。
原価34%と人件費30%を引いた36%が利益ですから、年間およそ400万円。これが、インパクト8点と採点した根拠です。
「1日2組弱」という感覚が大事です。満席のお店を作る話ではありません。60席のお店で、1日に2組弱だけ増える。それだけで年間およそ400万円という試算になります。
同じお客様を広告で集めると、1人3,000円から5,000円
広告と比べてみます。
新しいお客様を1人呼ぶのに、グルメサイトや広告なら3,000円から5,000円かかります。
この10秒は、お客様がスマホで広めてくださるので、広告費はかかりません。しかも、お店が出す広告より信じてもらえる形で広がります。「お店が言っていること」ではなく、「行った人が撮ったもの」だからです。
かかるお金は、練習の時間だけ
かかるお金も見ておきます。
- 新しいメニュー・新しい道具:0円(使うのは、お店にもうある料理と道具)
- 練習の手間:営業前の15分を週4回。10名が1時間ずつで、時給2,000円に換算して2万円
年30万円の1割にも届きません。だからコストは満点の10点です。
ここが、この施策のいちばん取り組みやすいところです。失敗しても、失うお金がありません。合わなければ、やめればいいだけです。
ステップ1:今週中に、お席で仕上げられる1品を1つ選ぶ
手順に落とします。3ステップです。
最初のステップは、店長が「お席で仕上げられる1品」を1つ選ぶことです。今週中に決めてください。
探すのは、新しいメニューではありません。いま厨房で最後にしている、ひと手間です。
5つの動きと、3つの条件
探す動きは、次の5つのどれかです。
- かける(タレ、ソース、仕上げの香味油)
- 注ぐ(スープ、だし、ミルク)
- 切る(大きなお肉、塊の料理をその場で切り分ける)
- 混ぜる(具とタレ、具とスープを混ぜ合わせる)
- 炙る(表面を炙って仕上げる)
そして、選ぶ条件は3つです。
- 音がすること
- 形か色が変わること
- 10秒で終わること
この3つがそろう1品を選びます。
3つそろわない動きは、候補から外してください。音がしない動きは動画になりません。形も色も変わらない動きは、撮っても見返されません。10秒を超える動きは、忙しい夜に省かれます。
まず1つだけに絞る理由
いくつも作らないでください。1つを全員ができるほうが、ずっと効きます。
理由は2つあります。ひとつは、型が1つなら全員が覚えられるからです。3つあると、誰がどれを担当するかの話になり、結局は得意な人に寄っていきます。
もうひとつは、数えられるからです。後ほどのステップ3で、演出をした組数とスマホを向けてくださった組数を数えます。型が1つなら、この数字がそのまま「効いているかどうか」の答えになります。型が3つあると、どの型が効いたのかが分からなくなります。
1品めで型が回り出したら、2品めを足すのはそのあとで間に合います。
値段を上げるテーブルサービスとは、別の施策です
ここで、点数の話をもうひとつ。
同じテーブルサービスでも、サービスを付けて商品の値段を上げる施策は、205個の中で65.5点、A評価です。枝も違って、あちらは「客単価を上げる→商品価格を上げる」の側にあります。
今日の10秒は、値段を上げないサービスです。値段はそのままで、来る理由を増やす。ここが点数の差になっています。
お席で仕上げるからといって、その1品の値段を上げる必要はありません。上げてしまうと、お客様が感じるのは「得」ではなく「負担」になります。
ステップ2:営業前の15分で、合図の一言と動きを型にする
2つ目のステップです。営業前の15分で、合図の一言と動きを型にします。
ここで大事なのは、「上手にやる」ことではなく「同じにやる」ことです。誰がやっても同じになる型を作ります。
型は4つの部品でできています
型は、4つの部品でできています。
- 合図の一言:「最後の仕上げを、お席でさせていただきます」
- 2秒待つ:お客様がスマホを出す時間です
- 10秒の動き:ステップ1で決めた動き
- 締めの一言:「お熱いうちにどうぞ」と添えて、すっと離れる
この流れを紙に書いて、厨房の入口に貼ります。営業前の15分で、全員が1回ずつやってみてください。週に4回やれば、入ったばかりのスタッフでもできるようになります。
4つの部品のうち、いちばん飛ばされやすいのが「2」の2秒です。合図を言った勢いでそのまま始めてしまうと、お客様はスマホを出す間がありません。ここは声に出して数えてもいいくらいです。
そして「4」の、すっと離れることも大事です。動きが終わったあとにテーブルに残っていると、お客様は撮りづらくなります。離れてから、お客様がご自分のペースで撮れる時間が生まれます。
焼肉店の冷麺で言えば、こうなります
具体的にやってみます。焼肉店の冷麺で言えば、こうなります。
器に麺と具だけを盛って、お席へ運ぶ。
「最後の仕上げを、お席でさせていただきます」。
2秒待つ。
冷たいスープを、高めの位置からゆっくり注ぐ。氷が鳴って、器の中が満ちていく。ここまでで10秒です。
「よく混ぜてお召し上がりください」で離れる。
厨房で注いでいたスープを、お席で注ぐだけです。
料理は何も変わっていません。原価も、値段も、盛り付けも同じです。変わったのは、スープを注ぐ場所だけです。
火を使う動きは、安全を先に決めてください
5つの動きのうち「炙る」を選ぶときは、安全を先に決めてください。
- お子様のいるテーブルではやらない
- 炎がお客様のほうへ向かない立ち位置を、紙に書いておく
- 燃えやすいもの(お客様の髪や衣服、紙のおしぼり袋、メニュー)を先にどかす
- 消火の備え(消火器の位置、濡れたふきん)を確認しておく
そして、制度の確認もしておいてください。火や煙を使う演出は、消防法や各自治体の火災予防条例の対象になることがあります。建物の用途や席の作り、煙や換気の条件によって扱いが変わりますので、始める前に所轄の消防署と、入居している建物の管理会社にご確認ください。火災保険の条件に触れる場合もあります。
迷ったら、火を使わない動き(かける・注ぐ・切る・混ぜる)から始めてください。音も、形や色の変化も、火を使わずに十分つくれます。
楽しい10秒は、安心の上にしか成り立ちません。
ステップ3:毎週月曜の営業前に、2つの数字を数える
3つ目のステップが、週に1回の記録です。毎週月曜の営業前に、店長が2つの数字を数えます。
- 先週、演出をした組の数
- スマホを向けてくださった組の数
営業中に、伝票の端に正の字で印を付けておくだけで足ります。新しい用紙も、アプリも要りません。
目標は、10組のうち3組です。
届かないときに直すのは、動きではなく合図です
10組のうち3組に届かない週があったときに、まず疑ってほしいのは動きではありません。合図です。
一言のあとの2秒を待たずに始めると、お客様はスマホを出す間がありません。これがいちばん多い原因です。
動きを派手にするより、2秒を守るほうが先です。営業前の練習で、合図を言ってから心の中で2つ数える。それだけで数字が変わります。
半年後の答え合わせは「動画で知った」の数
もうひとつ、数えておいてほしい数字があります。
初めてのお客様に「何で知っていただきましたか」と一言聞いて、「動画」と答えてくださった数です。
これも、週次の記録表に書いておきます。半年後、この数が答え合わせになります。
ここで焦らないでください。先に動くのはスマホを向けてくださる組数、あとから動くのが「動画で知った」の数です。この順番を知っておくと、途中で不安になりません。
人前で目立つ演出は、得意な人しかできません
ここで、ひとつ私の失敗をお話しさせてください。
宴会のときに、回し飲みのパフォーマンスをやっていたことがありました。スタッフが人前で真ん中に立って、口上を述べるものです。
ところが、恥ずかしがるスタッフが多くて、結局やめてしまいました。
人前で目立つ演出は、得意な人しかできません。盛り上がるときは盛り上がるのですが、できる人が限られると、その人がいない日には何も起きません。
だから、誰でもできる10秒の動きにするんです。この失敗が、ステップ1で「1つだけ」「全員ができるもの」と決めている理由です。
罠1:演出を長く、凝ったものにする
手順が分かっても、うまくいかないお店があります。理由ははっきりしていて、2つの罠があります。
ひとつ目は、演出を長く、凝ったものにすることです。
盛り上げようとするほど、演出は長くなります。1分のパフォーマンスを考えたくなります。
でも、満席の夜を思い出してください。60席が埋まると、3人組で20組です。
1組に1分かければ、スタッフは20分、テーブルに張り付きます。10秒なら、20組でも3分ちょっとです。
長い演出は、ほかのテーブルを待たせます。待たせた時点で、加点より減点のほうが大きくなります。そして忙しい日ほど省かれて、やがて誰もやらなくなります。
10秒は、満席の夜でも続けられる長さです。
ストップウォッチで、一度だけ測ってください
罠1を避ける方法は、ひとつだけです。
練習のときに、スマホのストップウォッチで一度測ってみてください。
動きの部分が10秒を超えていたら、動きを1つ削ります。足すより削るほうが、撮りたくなる10秒に近づきます。
「あと一手間加えたら、もっと喜んでいただけるのでは」と思ったときが、いちばん危ないところです。その一手間は、満席の夜に20組分かかります。
罠2:得意なスタッフだけがやる
ふたつ目の罠は、得意なスタッフだけがやることです。
演出が上手なスタッフがいると、その人に任せたくなります。実際、その人がやると場が盛り上がります。
でも、その人が休みの日は、演出がありません。
前回それを楽しみに来てくださったお客様は、「前はやってくれたのに」と感じます。せっかくの加点が、減点に変わってしまいます。
だからステップ1で、全員ができる1つに絞りました。上手な人の技ではなく、誰がやっても同じになる型を選んでください。
型が1つなら、入ったばかりのスタッフにも、その週から任せられます。お客様がスマホを向けてくださるのは、新しいスタッフにとって、お客様に喜ばれる最初の手応えになります。
顔が映るのを嫌がるスタッフには、手元だけで成立する動きを
もうひとつ、配慮しておきたいことがあります。
スタッフの中には、顔が映るのを嫌がる人もいます。
手元だけで成立する動きを選んでおけば、誰でも安心して担当できます。注ぐ、かける、切る。どれも手元で完結します。
人前に立って口上を述べる形は、できる人を選びます。そして、できる人しかできない型は、罠2そのものです。
「撮ってください」とはお願いしません
大事なことを書いておきます。
お客様の撮影は、お客様の自由です。「撮ってください」とお願いはしません。
お願いすると、宣伝のための演出に見えてしまうからです。お客様の動画が強いのは、「行った人が撮ったもの」だからでした。頼まれて撮られた動画では、その強みが消えてしまいます。
お店がするのは、撮りたくなる瞬間を用意するところまで。あとは、お客様が楽しんでくださるのを待つだけです。
投稿と引き換えに何かをお渡しする形も、やめてください。お礼は、言葉でお伝えするだけにしてください。
業態別の読み替え
お店の業態によって、出番が変わります。
居酒屋
宴会の〆が一番の出番です。雑炊やお茶漬けを、お席で仕上げてください。
宴会は1卓の人数が多いので、何台ものスマホが一斉に向きます。予約を受けるときに、幹事さんへ「〆はお席で仕上げます」と一言伝えておくと、宴会の楽しみがひとつ増えます。
ラーメン店
お席まで運ぶ距離が短いので、カウンター越しに見える最後のひと手間を使ってください。
仕上げの香味油をかける音は、それだけで動画になります。カウンターのお客様から見える位置で、最後のひと手間をしてください。
カフェ
ソースやミルクを、お客様の目の前で注いでください。
色が混ざっていく10秒は、そのまま動画の主役になります。音は小さいぶん、色の変化で勝負する業態です。
焼肉店
私と同じ焼肉店なら、網の上が舞台です。
最初の1枚にタレをかけると、音と煙が一緒に立ちます。〆の冷麺なら、スープをお席で注ぐ。お肉の値段を上げなくても、来る理由が1つ増えます。
半年ロードマップ:時間5点の道のり
採点で時間5点=「数字に表れるまで半年」とした道のりを、時系列にしておきます。
- 今週:店長が「お席で仕上げられる1品」を1つ選ぶ。音がする・形か色が変わる・10秒で終わる、の3条件で判定する
- 今週の営業前:合図の一言と動きを型にして、紙に書いて厨房の入口に貼る。全員が1回ずつやってみる。火を使う動きなら、安全の決めごとと消防署への確認を先に済ませる
- 毎営業日:伝票の端に、演出をした組とスマホを向けてくださった組の正の字を付ける
- 毎週月曜の営業前:2つの数字を数える。目標は10組のうち3組。届かないときは合図の2秒を直す
- 営業前15分×週4回:全員の練習を続ける。ストップウォッチで10秒を超えていたら動きを1つ削る
- 1〜2か月目:スマホを向けてくださる組数が動き始めるのを確認する
- 3〜6か月目:初めてのお客様の「動画で知った」の数が増えてくるのを確認する
途中で「撮られてはいるのに、お客様が増えない」と感じる期間があります。それで合っています。動画が人に届き、その方が来店されるまでに時間がかかるからです。だからこそ、毎週の2つの数字を道しるべにして進んでください。
演出した組の再来店を伝票から追うと、月に3時間
ここまで読んで、「うちもやってみよう」と思ってくださった方に、先にお伝えしておきたいことがあります。
演出をした組数とスマホを向けてくださった組数は、伝票の正の字で数えられます。手が止まるのは、その先です。
演出をした組のうち、何組がまた来てくださったかを伝票から追いかけると、月に3時間かかります。演出をした日とテーブルを探し、その次の来店を探す作業です。
テーブルごとの記録と来店の記録が自動でつながる環境なら、1分です。
まずは、伝票の端の正の字から始めましょう。数える習慣ができてから、追いかけ方を整えれば十分です。
よくある質問
Q. お客様のテーブルで作業をするのは、迷惑になりませんか。
A. 10秒で終わる動きなら、お客様をお待たせする時間にはなりません。合図の一言で先にお伝えして、終わったらすっと離れる。この形を守れば、お客様がご自分のペースで楽しめる時間になります。長い演出になると迷惑になる、というのが罠1の話です。
Q. 新しいメニューを作らないと、できませんか。
A. 要りません。いま厨房で最後にしているひと手間を、お席に移すだけです。まずは「かける・注ぐ・切る・混ぜる・炙る」のどれかに当てはまるひと手間を、1つだけ紙に書き出してみてください。
Q. 器や盛り付けも変えたほうがいいですか。
A. この施策では変えません。変えるのは、最後のひと手間をどこでやるかだけです。盛り付けや器、料理の名前は、商品そのものを作る別の施策の話になります。
Q. スマホを向けてくださる組が増えません。
A. まず合図を見てください。一言のあとの2秒を待たずに始めていると、お客様はスマホを出す間がありません。動きを派手にするより、2秒を守るほうが先です。
Q. 火を使う演出をやってみたいのですが、気をつけることはありますか。
A. 安全を先に決めてください。お子様のいるテーブルではやらない、炎がお客様のほうへ向かない立ち位置を紙に書く、燃えやすいものを先にどかす、消火の備えを確認する。そして、火や煙を使う演出は消防法や各自治体の火災予防条例の対象になることがありますので、始める前に所轄の消防署と建物の管理会社にご確認ください。迷ったら、火を使わない動きから始めてください。
Q. 演出が上手なスタッフに任せたほうが、盛り上がりませんか。
A. その人が休みの日に、演出がなくなります。前回それを楽しみに来てくださったお客様は「前はやってくれたのに」と感じて、加点が減点に変わります。誰がやっても同じになる型を選んでください。
Q. お客様に「よかったら動画を撮ってください」と言ってはいけませんか。
A. 言わないでください。お願いすると、宣伝のための演出に見えてしまいます。投稿と引き換えに何かをお渡しする形も避けてください。お店がするのは、撮りたくなる瞬間を用意するところまでです。
Q. お席で仕上げるのだから、その1品の値段を上げてもいいですか。
A. この施策では上げません。サービスを付けて商品の値段を上げる施策は、205個の中で65.5点・A評価の別の施策です。今日の10秒は値段を上げないサービスで、値段はそのままで来る理由を増やすところに価値があります。
Q. 効果はいつから出ますか。
A. スマホを向けてくださる組数は、来週から数えられます。初めてのお客様の「動画で知った」の数が動き始めるまでは数か月、売上や利益の数字に表れるまでは半年を見ておいてください。
Q. 何から始めればいいですか。
A. いま厨房で最後にしているひと手間を、1つだけ紙に書き出してください。お席でできるかどうかは、次の週に試せば間に合います。
まとめ:いつもの料理の最後の10秒を、お客様の前に持ってくる
要点を3つにまとめます。
- 写真は料理を映し、動画はお店の時間を映す。スタッフの声や笑い声が映るから、写真よりも来る理由がはっきり伝わる
- 撮りたくなる動きは10秒。音がして、形か色が変わること。それより長いと、構えた手が下がり、忙しい夜に省かれる
- 得意な人の技ではなく、全員ができる型を1つ。合図の一言→2秒待つ→10秒の動き→締めの一言
明日の1歩はこれだけです。いま厨房で最後にしているひと手間を、1つだけ紙に書き出してください。
書き出してみると、お客様の目に触れていなかった10秒が、意外とたくさん見つかります。新しいメニューを考える必要はありません。いつもの料理の最後の10秒を、お客様の前に持ってくるだけです。
最後に、うれしい話をひとつ。誕生日のお客様に、デザートプレートを作ってお出しすると、写真を撮って喜んでくださいます。周りのお客様も巻き込んでお祝いすると、うれしさがもっと増すようです。
しかも、それを見ていたほかのお客様が、今度はご自分の知り合いの誕生日に来てくださる。ひそかな販促にもなっているんです。
お客様が喜んでくださる瞬間は、そのまま次のお客様の入口になります。
この内容は、YouTube「飲食店経営ワンゼミ」教科書シリーズ#21でも解説しています。合図から10秒までの型の台本と、週ごとの記録表をそのまま使える「テーブル演出 設計シート」を公式LINEで無料配布していますので、今週の営業前ミーティングにそのままお使いください。
私も自分のお店で、今週また1品、お席で仕上げられる動きを探します。一緒にやりましょう。











