「食料品が1%になるらしいので、うちも値段を下げないとまずいですよね」。
もし店長さんからこう言われたら、その場で一度止めてください。お店の中で食べる外食は、1%になりません。10%のままです。
2027年4月1日から2年間、食料品の消費税を8%から1%に下げる方針が、政府から出されています。持ち帰り、テイクアウト、出前、宅配は1%の側です。けれども、店内での飲食とお酒は10%のままです。
つまり、持ち帰りと店内の差は、今の2%から9%に広がります。
いいニュースではありません。ただ、ここで慌てて店内の値段を下げるのが、いちばん効きます。利益にです。この記事では、何が決まって何がまだなのか、差はいくらになるのか、今週やること3つ、そして値下げがどれだけ重いかまでを、現役で飲食店を経営する立場からお伝えします。
目次
1. 何が決まって、何がまだなのか
1-1. 2027年4月から2年間、食料品が1%になる方針です
政府は2026年8月5日に基本方針を、9月15日に大綱を閣議決定しました。中身は、いま軽減税率の対象になっている飲食料品の消費税を、2027年4月1日から2年間、8%から1%に下げるというものです。
10月9日には関連の法律案を閣議決定し、国会に提出しました。いま開かれている臨時国会の会期は12月12日まで。政府はこの国会での成立を目指しています。
1-2. ただし、法律はまだ成立していません
ここが大事なところです。2026年10月時点で、法律は成立していません。
与党は参議院で過半数を持っていません。日本経済新聞は、参議院で審議が混乱する公算があると報じています。日程や中身が変わる余地がある段階だと考えてください。
1-3. ここまでの流れ
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2026年8月5日 | 基本方針を閣議決定 |
| 2026年9月15日 | 大綱を閣議決定 |
| 2026年10月9日 | 法律案を閣議決定し、国会に提出 |
| 2026年12月12日 | 臨時国会の会期末(政府は今国会での成立を目指す) |
| 2027年4月1日 | 引下げの開始(予定)。2年間の措置 |
※出典:内閣官房/日本経済新聞(2026年9月25日・10月9日)
2. 1%になるもの、10%のままのもの
2-1. 線引きは、いまの8%と同じです
国税庁の説明では、1%になるのは、いま8%になっているものと同じ範囲です。新しい線が引かれるわけではありません。
| 税率 | 中身 |
|---|---|
| 1%になる | 持ち帰り・テイクアウト・出前・宅配(いま8%のもの) |
| 10%のまま | 店内での飲食(外食)・ケータリング等 |
| 10%のまま | お酒(持ち帰りでも10%) |
2-2. お酒は、持ち帰りでも1%になりません
ここは取り違えやすいところです。お酒は軽減税率の対象外なので、持ち帰りでも10%のままです。
居酒屋のように、売上に占めるお酒の比率が高いお店ほど、「食料品が1%」の影響を直接は受けにくい、ということでもあります。
2-3. 1,000円の料理で、差は20円から90円へ
数字で見ると分かりやすくなります。本体価格1,000円のお弁当と、同じ1,000円の店内のお食事を比べます。
| 持ち帰り | 店内 | 差 | |
|---|---|---|---|
| いま | 1,080円(8%) | 1,100円(10%) | 20円 |
| 2027年4月から | 1,010円(1%) | 1,100円(10%) | 90円 |
お客様から見ると、同じ1,000円の料理が、持ち帰りなら90円安く見えるということです。20円なら気になりませんでしたが、90円は見えます。
3. 業界は何を心配しているのか
3-1. 回答した204社のうち、57.8%が「客数が減る」
外食の業界団体である日本フードサービス協会が、会員にアンケートを取りました。会員410社のうち204社が回答し、57.8%が「客数が減る」と予想しています。客単価の低下を見込む企業も21.1%ありました。
影響が大きいとされたのは、店内飲食の比率が高い業態と、客単価1,000円前後の業態です。ラーメン店、定食、カフェなどが当てはまります。
3-2. 食事券などの大規模な支援は、見送りの方向です
業界は、外食で使える食事券などの支援を求めてきました。ところが2026年10月13日の共同通信の報道では、政府はこれを見送る方向で調整しています。
代わりに、持ち帰りの導入や自動化など、経営の幅を広げる支援に絞る方針だと報じられています。業態ごとに影響が違うため、大規模な一律の支援は適さないと判断した、というのが理由です。
国の支援で客数が戻る形には、いまのところなっていません。 だからこそ、自分のお店での準備が大事になります。
※支援の詳細は、2027年度当初予算案の編成にかけて固まる見通しです。この報道は「調整」の段階のものです。
4. 2019年に「2つの税率」を経験して分かったこと
2019年に、消費税が8%と10%に分かれたときのことをお話しします。
当時、私のお店は居酒屋、焼肉屋、イタリアンでした。どれも、ほとんどお持ち帰りがない業態です。ですから、店内での混乱はほとんどありませんでした。
周りのお店を見ていても、券売機に「お持ち帰り」と「店内飲食」のボタンがありました。お客様の良心に任せても、基本的には皆さん正しく選択されているように見受けられました。
税率が2つあること自体は、心配しすぎなくて大丈夫です。
大事なのは別のところです。お客様が「今日はお店で食べるか、持ち帰るか」を選ぶときに、店内を選ぶ理由があるかどうか。そこだけです。
4-2. なぜ、外食だけ1%にならないのか
「同じ食べ物なのに、なぜお店で食べると10%なのか」と聞かれることがあります。
軽減税率の対象になっているのは、「飲食料品の譲渡」、つまり食べ物そのものを売る行為です。お店の中で食事を提供することは、席や接客を含めたサービスの提供として扱われるため、対象から外れています。
ケータリングや出張料理も、同じ理由で対象外です。一方で、出前・宅配は「食べ物を届けて売る」と整理されているため、対象に入ります。
この線引きは2019年から変わっていません。今回の1%も、新しい線を引き直すのではなく、いまの8%の範囲をそのまま1%にするという形です。ですから、「うちのどの商品が1%になるのか」は、いま8%で売っているものを見れば、それがそのまま1%になります。
5. 今週やること3つ
ステップ1:自分のお店の影響を、仮の数字で試算する
今週、店長かオーナーが、先月の売上を「店内」と「持ち帰り」に分けて書き出してください。そのうえで、「仮に客数が5.0%減ったら」を計算します。
私の焼肉店のモデル(60席・月商500万円・客単価6,000円・原価率34%・人件費率30%)で計算すると、こうなります。
- 月の客数は約830人
- 仮に5.0%減ると、約42人減
- 売上は月25万円減
- お肉の仕入れも、シフトの人件費も一緒に減るので、利益の減り方は月9万円
- 年にすると約110万円
※この「5.0%減」は仮定です。仮定を置いたうえで、お金の部分を実在するお店の数字で試算しています。仮に10.0%減なら、利益の減り方は月18万円です。
いくら取り戻せばいいかが、数字で見えるようになります。 これが最初の一歩です。
手作業でやるなら、1か月分の伝票を店内と持ち帰りに分けて数えるのに、半日ほどかかります。店内と持ち帰りを分けて自動で集計できる仕組みがあれば、数分で出ます。まずは、自分のお店の割合を知ることです。
早見表:客数が何%減ると、利益はいくら減るか
モデル店舗(月商500万円・客単価6,000円・限界利益率36%)で計算した目安です。ご自身のお店の月商に置き換えてご覧ください。
| 客数の減り方(仮定) | 売上の減り方(月) | 利益の減り方(月) | 利益の減り方(年) | 取り戻すのに要る客単価の上げ幅 |
|---|---|---|---|---|
| 3.0%減 | 15万円 | 約5万4千円 | 約65万円 | 約190円 |
| 5.0%減 | 25万円 | 9万円 | 約110万円 | 約320円 |
| 10.0%減 | 50万円 | 18万円 | 約220万円 | 約670円 |
※原価と人件費は、売上に合わせて減る前提(限界利益率36%)で計算しています。
※客単価の上げ幅は「客単価6,000円 ÷(1−減少率)−6,000円」で出しています。
この表の使い方はひとつだけです。「いくら減るか」を見るためではなく、「いくら取り戻せばいいか」を決めるために使ってください。 右端の列が、今週スタッフと話す目標になります。
試算の中身(計算の過程)
5.0%減のケースを、途中の数字まで開いておきます。
- 月の客数:500万円 ÷ 6,000円 = 約830人
- 5.0%減の人数:830人 × 5.0% = 約42人
- 売上の減り方:500万円 × 5.0% = 25万円
- 利益の減り方:25万円 × 限界利益率36% = 9万円(原価34%と人件費30%も売上に合わせて減る前提)
- 年にすると:9万円 × 12か月 = 約110万円
- 取り戻すのに要る客単価:6,000円 ÷ 0.95 = 約6,300円(上げ幅 約320円)
ステップ2:取り戻し方を、客単価と店内の体験で決める
客数が5.0%減っても、来てくださるお客様の客単価を約320円上げれば、売上は元に戻ります。
6,000円 → 約6,300円。ドリンク1杯600円より小さい金額です。原価率が同じなら、利益も元どおりになります。
ただし、値段だけを上げる話ではありません。持ち帰りでは手に入らないものに、お金を払う理由をつけます。
焼肉なら、目の前で焼ける香りと焼きたての一枚、スタッフのひと声、仲間と囲むテーブルです。
今週、スタッフと一緒に「店内でしか味わえないもの」を3つ書き出し、メニューのひと言と、注文のときの声かけに入れてください。紙1枚で終わります。
ステップ3:テイクアウトがあるお店は、価格表示とレジの準備を始める
持ち帰りの商品は、税率が8%から1%に変わります。やることは3つです。
- 持ち帰りの価格表を、1%で計算し直した一覧を作る
- レジの税率の設定を、持ち帰りの商品だけ1%に切り替えられるか、レジの会社に確認する
- 値札の貼り替えが間に合わないお店向けの特例を確認しておく
特例については、2027年2月1日から5月31日までの間、誤認させない掲示などを条件に、8%か1%の税込価格の表示も認める、と大綱に書かれています。
ただし、正式な日程と中身は、法律が成立してから確定します。 成立したら、国税庁の発表で日付を確かめてから設定してください。
6. 気をつけること——慌てて店内の値段を下げない
6-1. 罠その1:差を埋めようと、店内の値段を下げる
差が9%に広がると、店内の値段を下げて差を埋めたくなります。ここがいちばん危ないところです。
私の焼肉店のモデルで、店内の値段を5.0%下げたとします。
- お客様の数が変わらなければ、売上は月25万円減
- でも、出すお肉の量も、スタッフの人数も変わりません
- だから、減った25万円はそのまま利益から消えます
仮に客数が5.0%減ったときの利益の減り方は、月9万円でした。
| 同じ5.0%でも | 利益への響き |
|---|---|
| 客数が5.0%減る | 月9万円減 |
| 店内の値段を5.0%下げる | 月25万円減(約2.8倍) |
同じ5.0%でも、値下げのほうが約2.8倍重いのです。
6-4. 値下げの代わりに、先にやれることが3つあります
「それでも何か手を打ちたい」というときのために、値下げより先に試せるものを3つ挙げておきます。どれもお金がかかりません。
- メニューのひと言を足す。 「目の前で焼きたてを」「ここでしか出せない温度で」。持ち帰りでは手に入らないものを、文字にして置きます
- 注文のときの声かけを1つ決める。 スタッフ全員が同じ一言を言えるようにします。言葉がそろうと、お客様に伝わる速さが変わります
- お通しや〆の1品を見直す。 値段を下げずに客単価を動かせるのは、ここです。〆の一品は、帰り際の記憶にも残ります
値下げは、この3つを全部やってからの最後の手段だと考えてください。一度下げた値段は、戻すのに何倍も手間がかかります。
6-2. 罠その2:お酒も持ち帰りなら1%になると思い込む
前にも書きましたが、大事なところなのでもう一度。お酒は、持ち帰りでも10%のままです。価格表を作り直すときに、ここを間違えると全部やり直しになります。
6-3. 罠その3:法律の成立前に、レジの税率や値札を先に変えてしまう
日程と中身は、法律が成立してから確定します。 準備(一覧を作る、レジ会社に確認する)は今から進めて構いませんが、実際の切り替えは成立後です。
7. 業態別の補正
焼肉店・居酒屋のように、持ち帰りがほとんど無いお店
影響は、客数の動きだけです。持ち帰りと値段で比べられる場面がそもそも少ないので、店内の体験で客単価を守る側に全力を使ってください。ステップ3は不要です。
居酒屋(お酒の比率が高いお店)
お酒は持ち帰りでも10%のままです。料理の持ち帰りとの比較を、いちばん受けにくい業態です。ただし、料理の持ち帰りを始めている場合はステップ3が要ります。
ラーメン店・定食・カフェ(客単価1,000円前後)
いちばん影響を受けやすい業態です。協会の調査でも影響が大きいとされています。持ち帰りメニューを用意するかどうかの判断と、ステップ3の準備を最優先で進めてください。
すでにテイクアウトをやっているお店
ステップ3が最優先です。価格表とレジの2つを、法律の成立前に「準備だけ」終わらせておくと、成立後に慌てずに済みます。
7-5. 今月から2027年4月までの進め方
いますぐ全部やる必要はありません。順番があります。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 2026年10月〜11月 | 先月の売上を店内と持ち帰りに分ける/影響を試算する/「店内でしか味わえないもの」を3つ書き出す |
| 法律の成立後(年内の見込み) | 国税庁の発表で日程と中身を確認する |
| 2026年12月〜2027年1月 | 持ち帰りの価格表を1%で作り直す(紙の上だけ)/レジ会社に切り替えの可否を確認する |
| 2027年2月〜3月 | 表示の特例の条件を確認/値札の貼り替えの段取りを決める |
| 2027年4月1日 | 切り替え |
いま動くのは、いちばん上の1行だけで十分です。 残りは、法律が成立してからで間に合います。
8. よくある質問
Q. 結局、いつから1%になるのですか。
A. 2027年4月1日からの予定です。ただし法律はまだ成立していません。2026年10月時点では「政府の方針」の段階です。
Q. 店内で食べていたお客様が、途中で「持ち帰りにします」と言ったら。
A. 判定は、注文のときの状況で行われるのが基本です。細かい取扱いは国税庁のQ&Aに示されていますので、顧問税理士にご確認ください。
Q. 券売機を入れ替える必要はありますか。
A. まずは、いまの券売機・レジで持ち帰りだけ税率を切り替えられるかを、メーカーに確認してください。入れ替えの判断はその後です。
Q. 持ち帰りを始めたほうがいいでしょうか。
A. 業態によります。焼肉や居酒屋は、持ち帰りに向かない料理が多く、無理に始めると品質と提供時間の両方を落とします。客単価1,000円前後のお店は、検討する価値があります。
Q. 何から始めればいいですか。
A. 先月の売上を、店内と持ち帰りに分けて書き出すことです。それだけで、自分のお店がどちら側にいるのかが分かります。
9. 聞かれたときの答え方
2027年4月が近づくと、お客様からもスタッフからも質問が出ます。答えを先に決めておくと、現場が迷いません。 そのまま使える言い方を並べておきます。
お客様に「ここは1%じゃないの」と聞かれたら
「お持ち帰りは1%ですが、お店の中で召し上がる場合は10%のままなんです。国の決まりで、店内でのお食事は対象外になっています」
お店の判断ではなく、制度の線引きであることを先に伝えます。言い訳のように聞こえないよう、短く言い切るのがコツです。
「じゃあ持ち帰りにします」と言われたら
「ありがとうございます。お持ち帰りもご用意できます。ただ、こちらは焼きたてをお出しできるので、よろしければ中でも」
断らない、止めない。 そのうえで、店内の理由をひと言だけ添えます。ステップ2で書き出した3つが、ここで効いてきます。
スタッフから「うちも値下げするんですか」と聞かれたら
「下げません。下げると利益の減り方が、お客様が減るときの3倍近くになるからです。代わりに、店内でしか味わえないものを3つ決めます」
理由を数字で言えると、納得の速さが変わります。 「約2.8倍」という数字は、朝礼で1回伝えておくだけで十分です。
まとめ:値段で比べられる勝負をしない
要点を3つにまとめます。
- 食料品の消費税1%は、2027年4月からの政府の方針。法律はまだ国会で審議中(2026年10月時点)
- 外食は10%のまま。持ち帰りとの差は、2%から9%に広がる。お酒は持ち帰りでも10%
- 慌てて値下げしない。同じ5.0%でも、値下げは客数減の約2.8倍重い。影響を試算して、店内の体験に価値をつける
明日、まずこれだけやってください。先月の売上を、店内と持ち帰りに分けて書き出すことです。
2019年にも、「店内が不利になる」という話は出ました。でも結局、店内での飲食は、別物でした。私は、「飲食体験」にしっかり価値をつけることが大事だと考えています。
持ち帰りと値段で比べられる勝負をするのではなく、店内に来る理由で選ばれるお店にする。 それが、差が広がっても慌てないための、いちばんの準備です。
※本記事の制度に関する内容と数字は、2026年10月時点で確認した公表情報に基づく一般的な解説です。法律はまだ成立していません。 日程や中身が変わる可能性があります。
※試算に使った「仮に客数が5.0%減ったら」「仮に店内の値段を5.0%下げたら」は仮定です。金額はモデル店舗(焼肉60席・月商500万円・客単価6,000円・原価率34%・人件費率30%)の数字で、概算の目安です。
※税率の判定、価格表示、レジの設定、仕入税額控除の取扱いは、必ず顧問税理士にご確認ください。
※実務の判断は、内閣官房・国税庁の最新の公表情報をご確認ください。表示の特例の日程は、法律の成立後に国税庁の発表で確定します。
この内容は、YouTube「飲食店経営ワンゼミ」の時事回でも解説しています。自分のお店の数字で影響をその場で出せる「消費税1% 影響の試算シート+持ち帰り価格の切り替えチェックリスト」を公式LINEで無料配布していますので、今週の営業前ミーティングにそのままお使いください。
私も自分のお店で、今月中に先月の数字を分けて書き出します。一緒にやりましょう。
\ 今週の営業前ミーティングにそのまま使える! /
消費税1% 影響の試算シート+持ち帰り価格の切り替えチェックリスト
公式LINEにて無料で受け取れます











