目次
■ 「1日いくら売れたら黒字ですか」に、即答できますか
あなたのお店は、1日いくら売れたら黒字ですか。
この質問に即答できる経営者は、実はほとんどいません。毎日レジを締めて、売上の数字は誰よりも見ているのに、「その売上で黒字なのか、赤字なのか」を1日単位の金額で言えるお店は少数派です。
答えの名前は「損益分岐点」。売上がこの線を超えれば黒字、下回れば赤字という、境目の金額のことです。
私は飲食店の利益改善策を205個すべて書き出し、「年間いくら利益が増えるか」「いくらかかるか」「効果が出るまで何か月か」の3つの基準で、1つずつ100点満点の採点をしました。「損益分岐点を把握する」は75.5点・A評価で、205個中25位タイ。かかるお金は0円、必要なのは電卓と5分だけの施策です。
私は飲食店の店長を10年、経営を25年、コンサルタントを15年やってきました。今は飲食店専用のPOSレジを作る会社を経営しながら、60席の焼肉店を自分で経営しています。この記事の試算はすべて、その実在するお店(月商500万円・原価率34%・人件費率30%・家賃65万円)の数字で行います。
白状すると、私自身、昔は固定費と変動費の区別すら意識していませんでした。この計算を知ってから、経営の景色が変わりました。この記事を読み終わる頃には、あなたのお店の「黒字ライン」が1日単位の金額で言えるようになります。一緒にやっていきましょう。
■ なぜ、売上は言えるのに黒字ラインは言えないのか
売上は、毎日レジが教えてくれます。でも利益は、決算や税金の申告のときにまとめて眺めるだけ、というお店が少なくありません。日々目に入る数字と、経営の判断に必要な数字が、ずれているのです。
損益分岐点が優れているのは、この2つをつなぐところです。「利益がいくら出たか」を毎日計算するのは大変ですが、「今日の売上が黒字ラインを超えたか」なら、レジの数字と貼り紙を見比べるだけで分かります。利益という月単位のむずかしい数字を、売上という毎日見える数字の物差しに翻訳する。それが損益分岐点の正体です。
だからこの施策は、会計の知識がなくても使えます。必要なのは、割り算1回と、計算結果を壁に貼る画びょう1本だけです。
■ 採点の内訳:0円・5分の施策が、なぜ25位に入るのか
まず点数の中身からお見せします。
- インパクト6点:この数字を知ると、営業時間・シフト・メニューの判断の質が全部上がる。年間300万円クラスの利益効果と採点
- コスト10点(満点):電卓1つ。0円
- 時間7点:計算は今日できて、判断が変わって効果が出るまでおよそ2か月
注目してほしいのは、コストの10点です。205施策の中には、お金も時間もかかる施策がたくさんあります。その中でこの施策は、電卓と5分で今日始められる。それなのにインパクトは年間300万円クラス。費用対効果で見ると、205個の中でも特別な位置にいます。
施策の場所で言うと、「利益を増やす」ではなく「利益を守る」の枝の、「経営数字を把握する」というグループに入ります。攻めの施策ではありません。でも、営業時間を延ばすか、シフトを削るか、メニューを変えるか——どの判断をするにも、「うちの黒字ラインはどこか」が分かっていないと、当てずっぽうになります。派手さはないのに25位に入ったのは、損益分岐点が、他の204施策すべての判断の精度を上げる「土台の数字」だからです。
■ 最初に結論:飲食店の人件費は「変動費」です
この記事でいちばん伝えたいことを、最初に言います。
会計の勉強をすると「人件費は固定費」と習います。でも飲食店では、それは違います。
なぜか。飲食店の人件費は、シフトで売上に連動して調整できるからです。忙しい日は人を厚く、暇な日は薄く。毎週シフトを組むという行為は、人件費を売上に合わせて変動させる行為そのものです。だから私は、原価と人件費の両方を変動費として損益分岐点を計算すべきだと考えています。
教科書と違うことを言っている自覚はあります。それでも、25年お店をやってきた実感として、ここは強く言い切ります。飲食店の損益分岐点は、人件費を変動費に入れて計算してください。
なお、教科書が間違っているという話ではありません。人件費を簡単に増減できない業種なら、固定費と考える方が実態に合います。でも飲食店は、毎週シフトを組み直す業種です。実態に合わせて数字を扱うのが経営ですから、飲食店には飲食店の計算があっていい。これがこの記事の立場です。
この前提の違いが、どれだけ結果を変えるのか。次の章で、私のお店の実際の数字で比べます。
■ 同じお店なのに、黒字ラインが114万円ずれる
私のお店の数字を並べます。焼肉店、月商500万円、原価率34%、人件費率30%、家賃65万円。家賃以外の固定費(リース・保険・通信など)を25万円として、固定費は月90万円です。
教科書どおりに、人件費150万円を固定費に入れて計算するとこうなります。
固定費240万円÷(1−原価率34%)=損益分岐点はおよそ364万円
一方、飲食店の現実に合わせて、人件費も変動費として計算するとこうなります。
固定費90万円÷限界利益率36%(100%−原価34%−人件費30%)=損益分岐点は250万円
同じお店なのに、計算の前提ひとつで、黒字ラインが月114万円も違って見えます。
この差は、計算上の話では終わりません。教科書式で計算したお店には、2つの不幸が起きます。
ひとつは、実際より重い目標を背負って「うちは全然ダメだ」と誤解すること。本当は250万円で黒字なのに、364万円が黒字ラインだと思い込めば、毎月「届かない」と落ち込みながら営業することになります。
もうひとつは、シフト調整という一番効く打ち手が、数字に表れないこと。人件費を固定費と見なした瞬間、「暇な日はシフトを薄くする」という日々の工夫が、損益分岐点を1円も動かさない計算になります。人件費を守る動機が、数字の上から消えてしまうのです。
どちらも、経営の判断を狂わせます。前提は、それほど大事です。
■ 用語をかんたんに整理します
計算に入る前に、3つの言葉だけ整理させてください。むずかしい言い方はしません。
固定費:お客様がゼロでも出ていくお金。家賃、機器のリース料、保険、通信費、借入の返済利息、基本料金系。売上がゼロの月でも、この金額は必ず出ていきます。
変動費:売上に連動して増えたり減ったりするお金。飲食店では原価(食材)と人件費です。売れれば食材は減り、忙しければ人を入れる。売上と一緒に動くお金です。ポイントは、金額ではなく「率」で考えることです。変動費は売上と一緒に動くので、金額で追いかけるときりがありません。売上に対する割合で押さえるから、割り算1回の式に落とし込めます。
限界利益率:売上のうち、変動費を払った後に手元に残るお金の割合。私のお店なら100%−原価34%−人件費30%=36%。売上1,000円のうち360円が、固定費の支払いと利益に回るお金です。
この3つがつながらせると、損益分岐点の式は1本になります。
損益分岐点売上=固定費÷限界利益率
「固定費という毎月の重り」を、「売上1,000円ごとに残る360円」で少しずつ持ち上げていく。重りを持ち上げ切った瞬間の売上が、損益分岐点です。イメージさえつかめれば、あとは割り算だけです。
■ 5分でできる損益分岐点の計算3ステップ
では計算です。電卓と、先月の数字が分かるものだけ用意してください。
▼ ステップ1:固定費を書き出す(2分)
「お客様がゼロでも出ていくお金」だけを足します。家賃、機器のリース料、保険、通信費、借入の返済利息、基本料金系。私のお店なら家賃65万円+その他25万円=90万円です。
ここに原価と人件費は入れません。迷う費目があっても、まずは大きくつかむことを優先してください。細かい正確さより、今日物差しを持つことの方が大事です。
書き出しのコツは、通帳とカードの明細を1か月ぶん眺めながら書くことです。「毎月ほぼ同じ金額が引き落とされているもの」が、固定費の候補です。記憶だけで書くと、リースや保険のような「静かに出ていくお金」を落としやすいので、明細を目で追いながら拾ってください。
▼ ステップ2:限界利益率を出す(1分)
100%から、原価率と人件費率を引きます。私のお店なら100−34−30=36%。
率がすぐに分からなければ、先月の売上に対する食材仕入と給与の割合を出せば十分です。先月の請求書と給与明細があれば、この場で出せます。
▼ ステップ3:割り算して日割りにする(2分)
固定費÷限界利益率=損益分岐点売上。私のお店なら90万円÷36%=月250万円。30日で割ると、1日およそ8.3万円です。
出てきた数字は、レジ横でもバックヤードでもいい、スタッフと共有できる場所に貼ってください。ここまでで5分。かかったお金は0円です。
■ 「1日8.3万円」という物差しが、毎日の営業を変える
私はこの計算を覚えたとき、はっきり意識が変わりました。
それまでは、売上の数字だけを追いかけていました。昨日より多いか少ないか。先月より多いか少ないか。比べる相手が、いつも「過去の売上」だったのです。
でも大事なのは売上ではなく、利益でした。いくら売れば黒字か。あといくらで届くか。比べる相手が「黒字ライン」に変わった日から、毎日の営業がゲームのように明確になりました。
「今日は8.3万円を超えたか」。この問いを、オーナーだけのものにしないでください。スタッフと共有できる場所に貼る理由がここにあります。黒字ラインをお店のみんなが知っていると、「今日はあと少しで届く」という会話が生まれます。売上目標を押しつけるのではなく、お店の黒字の線をみんなで見る。数字がひとつ壁に貼ってあるだけで、営業の景色は変わります。
■ 「年間300万円クラスの利益効果」の中身は、判断の質です
採点でインパクト6点=年間300万円クラスとした中身を、もう少し具体的にお見せします。損益分岐点そのものは、1円も売上を増やしません。効くのは、この数字を知った後の「判断」です。
営業時間の判断:暇な時間帯の営業を続けるかどうかを、感覚ではなく「その時間帯の売上は、黒字ラインに貢献しているか」で考えられるようになります。
シフトの判断:「今日は予約が少ないから30分早上がりにしよう」という小さな調整が、黒字ラインにきちんと効くことが数字で実感できるので、続けられます。人件費を変動費として計算しているからこそ、この努力が損益分岐点の低下として数字に表れます。
メニューの判断:原価率が動けば限界利益率が動き、限界利益率が動けば黒字ラインが動きます。メニュー改定を「なんとなく」ではなく、「黒字ラインがどちらに動くか」で考えられるようになります。
どれも、物差しがあって初めて成り立つ判断です。ひとつひとつは小さくても、営業時間・シフト・メニューの判断が1年間積み重なった差を、私は年間300万円クラスと採点しました。
■ 月の途中での使い方:数字は貼って、使って、初めて施策になる
損益分岐点は、知った日ではなく、判断に使った日から効き始めます。使い方は2つです。
ひとつ、毎日見る。「今日8.3万円いったか」を、営業後に確認します。超えた日は何が良かったのか、届かなかった日は何が違ったのか。1日単位の物差しがあると、振り返りが具体的になります。
ふたつ、月の途中で出し直す。月の途中で足りなければ、残りの日数で1日いくら必要かを出し直します。月末に「今月もダメだった」と振り返るのではなく、月の途中で「残りの日数でどう届かせるか」を考える。同じ数字でも、月末に見れば反省文になり、月の途中に見れば作戦になります。
この出し直しも、割り算1回です。物差しというものは、細かく正確であることより、すぐに出せて毎日使えることに価値があります。損益分岐点は、その条件を全部満たしている、めずらしい経営数字です。
■ 計算を間違えるお店の2つの罠
▼ 罠1:人件費を固定費に入れてしまう
この記事の本題の裏返しです。教科書式で計算すると、黒字ラインが重く見えすぎて、正しい打ち手(シフトの30分調整)が数字に出ません。飲食店は原価と人件費を変動費で。ここだけは譲らないでください。
教科書式に寄せたくなる気持ちは分かります。会計の資料や帳簿の区分は、多くが教科書式だからです。決算や申告の書類は、そのままでかまいません。ただ、日々の経営判断に使う物差しだけは、飲食店式で持ってください。書類のための数字と、判断のための数字。用途が違う2つの数字だと整理すれば、矛盾はしません。
▼ 罠2:計算して満足する
もうひとつの罠は、計算した達成感で終わってしまうことです。せっかく出した「月250万円・1日8.3万円」という数字も、手帳の中で眠っていては1円も生みません。
対策はシンプルです。目に入る場所に貼ること。レジ横でも、バックヤードでも、朝礼で口に出すのでもかまいません。損益分岐点は、知識ではなく道具です。道具は、手の届くところに置いてあるから使われます。
■ 業態別の補正:ラーメン店とカフェ
この計算は、業態によって少しだけ読み替えが必要です。
ラーメン店など、原価率が高め(38%前後)で人件費率が低めの業態は、限界利益率が私のお店と近くなることが多いです。ただし「近くなることが多い」であって、同じではありません。必ずご自身のお店の率で計算してください。
カフェは客単価が低いぶん、損益分岐点を「1日の来店客数」に換算する方が使いやすくなります。式は、分岐点売上÷客単価=1日に必要な来店客数。金額よりも「あと何人」の方が、日々の物差しとしてピンとくるからです。ホールに立ちながら「あと何組で今日は黒字」と数えられる形に直しておくと、数字がぐっと身近になります。
■ 損益分岐点は「毎月の羅針盤」:月1回の更新を忘れずに
この計算、一度やって終わりではありません。月に1回は更新が必要です。
家賃交渉やリース終了で固定費は動きます。メニュー改定で原価率も動きます。式の分子と分母が動く以上、答えである損益分岐点も動きます。古い黒字ラインを貼ったままにすると、正しく従うほど判断がずれていく、一番危険な状態になります。
更新にかかる手間は、お店の数字の環境で大きく変わります。売上・原価・人件費が自動で集まる仕組みがあるお店なら、更新は1分です。手集計のお店は、毎月1時間仕事になります。
数字の土台があると、この施策はただの「一度きりの計算」から「毎月の羅針盤」に変わります。損益分岐点の計算を機に、毎月の数字の出し方も一度見直してみてください。
更新のたびに、黒字ラインは少しずつ動きます。その動きこそが、経営の通信簿です。先月より黒字ラインが下がっていれば、固定費の見直しか、原価とシフトの工夫が効いた証拠。上がっていれば、どこかで固定費が増えたか、率が崩れた合図です。月に1回、割り算1回。これだけで、お店の体質の変化が数字で見えるようになります。
■ 式が教えてくれる、黒字ラインの下げ方
損益分岐点売上=固定費÷限界利益率。この式は、黒字ラインの下げ方も教えてくれます。動かせる場所は、2つしかありません。
ひとつ、分子の固定費を下げる。家賃の交渉、使っていないリースや契約の見直し。固定費が下がれば、同じ限界利益率でも損益分岐点は下がります。
ふたつ、分母の限界利益率を上げる。原価率を下げる工夫、シフトの精度を上げて人件費率を整える工夫。売上1,000円のうち手元に残るお金が増えれば、固定費を持ち上げる力が強くなります。
逆に、損益分岐点が上がる合図も分かるようになります。新しいリース契約を結ぶとき、それは毎月の固定費が増える、つまり黒字ラインが上がる判断です。「この契約で、うちの損益分岐点はいくら上がるか」。この問いが自然に出てくるようになったら、この施策は完全にあなたのものです。
■ これから開業する方へ:物件を決める前にも使えます
この計算は、開業前にも役に立ちます。むしろ開業前こそ、一番安く使えるタイミングです。
物件の家賃が決まれば、固定費のいちばん大きな部分が決まります。そこに想定の原価率と人件費率を置けば、お店を開ける前に「このお店は1日いくら売れたら黒字か」が出せます。その金額を、席数と客単価と回転で本当にまかなえそうか。内装にお金をかける前に、契約書に判を押す前に、電卓の上で確かめられます。
開業してから黒字ラインの重さに気づくのと、契約前に気づくのとでは、打てる手の数がまったく違います。これから開業する方は、物件の内見に電卓を持っていってください。
■ よくある質問
Q. 水道光熱費は、固定費と変動費のどちらに入れればいいですか。
A. 厳密には、基本料金の部分が固定費、使った分に応じて増える部分が変動費です。ただ、最初の計算でそこまで分ける必要はありません。この計算の目的は、正確な決算書を作ることではなく、5分で物差しを持つことです。迷った費目はいったんどちらかに入れて先に進み、月1回の更新のときに整えれば十分です。
Q. 借入の返済は固定費に入りますか。
A. 固定費に入れるのは、返済のうち利息の部分です。細かい話に感じたら、まずは家賃・リース・保険・通信費の大きな費目だけで計算を始めてください。大きな費目さえ押さえれば、物差しとしては十分に機能します。
Q. 社員の給料まで変動費にするのは、乱暴ではありませんか。
A. もっともな疑問です。社員の給料は毎月ほぼ同じ額が出ていくので、固定費に見えます。それでも私が変動費に入れるのは、数字とシフトという打ち手をつなげておきたいからです。人件費を固定費にした瞬間、シフト調整の努力が損益分岐点に反映されなくなります。数字と打ち手がつながっている計算の方が経営の役に立つ、というのが25年の実感です。
Q. 原価率や人件費率が正確に分かりません。
A. 先月の売上に対する食材仕入の割合と、給与の割合を出せば十分です。先月の請求書と給与明細があれば出せます。率の正確さを上げるのは2回目以降でかまいません。まず1回、いま手元にある材料で計算することが先です。
Q. 計算したら、いまの売上が損益分岐点を下回っていました。
A. まず、それが分かったこと自体が大きな前進です。多くのお店は、下回っていることに気づかないまま営業を続けています。次にやることは、式の通り2つです。固定費を下げられないか(家賃・リース・契約の見直し)、限界利益率を上げられないか(原価とシフトの見直し)。黒字ラインが見えていれば、打ち手は選べます。ひとつずつ、一緒にやっていきましょう。
Q. 毎月更新する時間が取れるか不安です。
A. 手集計だと毎月1時間かかるので、その不安はもっともです。対策は2つあります。ひとつは、更新日を決めてしまうこと。月初の決まった日に、先月の数字で計算し直すと予定に入れてしまえば、忘れずに続きます。もうひとつは、売上・原価・人件費が自動で集まる仕組みを作ることです。仕組みがあれば、更新は1分で終わります。
Q. 日割りは、30日で割ればいいですか。営業日数で割ればいいですか。
A. 貼って毎日使う物差しなので、営業している日の数で割る方が実感に合います。定休日があるお店は、月の営業日数で割ってください。ちなみに私のお店の「1日8.3万円」は、250万円を30日で割った数字です。大事なのは割り方の厳密さより、毎日同じ物差しで見続けることです。
Q. 損益分岐点は、低ければ低いほどいいのですか。
A. 物差しとしては、低いほど「守りの固いお店」です。売上が落ち込む月があっても、黒字ラインが低ければ赤字になりにくいからです。ただし、固定費を削ることが目的化して、お店の魅力やスタッフの働きやすさを損ねては本末転倒です。式はあくまで物差しで、目的はお客さまの満足とお店の利益の両立です。順番を間違えないようにだけ、気をつけてください。
Q. スタッフに黒字ラインを見せても大丈夫ですか。
A. 私は貼ることをおすすめしています。黒字ラインは隠すべき秘密というより、みんなで守る線です。数字を共有されたスタッフは、お店の数字を自分ごとにしやすくなります。どうしても金額をそのまま出したくない事情があるお店は、「今日の目標」という形の数字に直して貼る方法もあります。大事なのは、その日のうちに全員が見られることです。
■ 今日の5分でやること
最後に、この記事を閉じた後の動きを、チェックリストにしておきます。
- 電卓と、先月の数字が分かるもの(通帳・請求書・給与明細)を手元に置く
- 「お客様がゼロでも出ていくお金」を書き出して、足す(2分)
- 100%から原価率と人件費率を引いて、限界利益率を出す(1分)
- 固定費÷限界利益率で月の損益分岐点を出し、日割りにする(2分)
- 出てきた数字を、スタッフと共有できる場所に貼る
- カレンダーの月初の日に「損益分岐点の更新」と書き込む
ここまでやって、かかるお金は0円です。205個の施策の中で、読んだその日のうちに完了できるものは、そう多くありません。今日の5分が、明日からの物差しになります。
■ まとめ:黒字ラインを、1日単位で持ってください
要点を3つにまとめます。
- 飲食店の人件費は固定費ではなく変動費。教科書式との差は、私のお店で月114万円
- 固定費÷限界利益率=損益分岐点。私のお店は90万円÷36%=月250万円、1日8.3万円
- 計算して、貼って、毎日使う。月に1回更新して「毎月の羅針盤」にする
明日の1歩は、固定費を紙に書き出すことです。家賃から始めれば、2分で終わります。
この内容は、YouTube「飲食店経営ワンゼミ」教科書シリーズ#04で動画でも解説しています。記事でお見せした計算手順を書き込み式にした「損益分岐点かんたん計算シート」(固定費の書き出し欄・限界利益率の計算欄・日割り換算・貼り出し用の黒字ライン記入欄)を公式LINEで無料配布していますので、電卓のお供にお使いください。
私も自分のお店の損益分岐点を、今月も月初に更新します。一緒にやりましょう。












